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プレスリリース

2024年3月18日
研究開発

-食用油脂の品質に影響する「酸化」コントロールの方法が進歩-東北大学大学院農学研究科との共同研究講座2027年3月まで3年間延長

 株式会社 J-オイルミルズ(東京都中央区、代表取締役社長執行役員 CEO:佐藤 達也 以下当社)は、東北大学大学院農学研究科と2019年4月から取り組んできた食用油脂の酸化に関する共同研究講座(J-オイルミルズ 油脂イノベーション共同研究講座)をさらに3年間延長し、2027年3月31日まで開講することをお知らせします。
 ※食用油脂の酸化:空気中の酸素と油脂が反応して起こる変化のこと。熱や光などの影響が大きく、味や風味の劣化に直結します。

 本共同研究講座は2019年4月1日に開講し、これまで食用油脂の酸化について研究に取り組んでまいりました。食用油脂は保存、調理の各過程で酸化します。油脂の適度な酸化は食品に好ましい風味を与える一方で、過度な酸化は食品の味や香りを損なう要因となっています。しかし、酸化のメカニズムは極めて複雑であるため、酸化を完全にコントロールする方法は確立されていません。

 東北大学との5年間にわたる共同研究の結果、研究チームは酸化した油脂を詳細に分析する方法を複数構築し、熱・光酸化によって生じる成分と生成経路を解明してきました。最近ではオリーブオイルの香りに影響を与える酸化物の生成経路の特定に近づいており、より高品質なオリーブオイルの開発が期待されます。

 今回、共同研究講座を3年間延長することによって、油脂の酸化に関するさらなる基礎データ収集を進めるとともに、これまで得られた熱・光による油脂の酸化に関する知見やオリーブオイルの風味に関する知見を基に、油脂のおいしさや健康価値の創造に向けて、応用研究を展開していきます。

研究成果イメージ図.png

 また、本共同研究講座での研究成果をまとめた、食用油脂の酸化による風味生成経路を新たに証明した論文が評価され、日本農芸化学会の学会誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」に掲載、2023年の「論文賞」を受賞しました。

タイトル:Elucidation of decomposition pathways of linoleic acid hydroperoxide isomers by GC-MS and LC-MS/MS (GC-MSおよびLC-MS/MSによるリノール酸ヒドロペルオキシド異性体の分解経路の解明)
著者:Ruriko Miyazaki, Shunji Kato, Yurika Otoki, Halida Rahmania, Masayoshi Sakaino, Shigeo Takeuchi, Toshiro Sato, Jun Imagi and Kiyotaka Nakagawa*(宮崎瑠璃子, 加藤俊治, 乙木百合香, Halida Rahmania, 境野眞善, 竹内茂雄, 佐藤俊郎, 今義潤, 仲川清隆*)(*責任著者)
掲載誌:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry , 2023, Vol. 87, 179-190
DOI:https://doi.org/10.1093/bbb/zbac189
掲載URL:https://academic.oup.com/bbb/article/87/2/179/6843572

 今回の共同研究講座延長にあたり、「日本農芸化学会2024年度東京大会」におきまして、これまでの研究成果を紹介するランチョンセミナーを以下のとおり開催いたします。

■日本農芸化学会2024年度東京大会 ランチョンセミナー概要

場所:東京農業大学世田谷キャンパス
日時:2024年3月25日(月)12:35~13:25
セミナー題目:「油脂酸化メカニズム研究の進展~本共同研究講座の5年間の取り組み報告~」
・油脂の酸化評価の新技術開発
・オリーブオイルの風味発現メカニズム解明
 https://www.jsbba.or.jp/2024/wp-content/uploads/file/program/ls/LS2-1.pdf

共同研究講座の研究内容や活動、業績、連絡先の詳細は共同研究講座公式ウェブサイトに掲載しています。
 https://www.agri.tohoku.ac.jp/jomil/index.html

 当社は「おいしさ×健康×低負荷」を目指すべき未来に掲げ、これまでも一般的なフライオイルよりも劣化を抑制する特許製法「SUSTEC®(サステック)」を用い、使用期間を最長約4割延ばす商品「長徳®」シリーズの開発などに注力してまいりました。今回の講座延長を契機に東北大学との共同研究を深化させることで、食用油脂の価値を最大化し、当社が重要課題と位置付ける「環境負荷の抑制」「食資源の維持」にも一層努めてまいります。

■講座スタッフ紹介

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教授(兼任):仲川 清隆(東北大学 大学院農学研究科 農芸化学専攻)
プロフィール
1999年 東北大学 農学博士授与
東北大学 大学院農学研究科 助手、同 助教授、同 准教授、米国タフツ大学JeanMayer老化栄養研究所へ留学を経て、東北大学大学院農学研究科 教授、同研究科 副研究科長。専門は食品科学と油化学、食品機能学。

コメント
 油脂の酸化は悪いものとして捉えられることが多く、このことは少々残念に感じています。例えば、油脂そのものは無味無臭ですが、幾つかの酸化物は、風味などで私たちの食生活を豊かにしてくれていると思います。こうしたことを考えると、酸化は悪いものというよりは、やはり「制御するもの」ではないでしょうか。故に、複雑な酸化の反応をひとつひとつ制御して、私たちにとってより好ましいものをチョイスできるような技術開発を目指しております。

加藤先生.jpg

准教授:加藤 俊治(東北大学 大学院農学研究科 農芸化学専攻)
プロフィール
2014年 東北大学農学博士授与
東北大学大学院農学研究科 博士研究員、日本医科大学 糖尿病・内分泌代謝内科 博士研究員、東海大学医学部 生体防御学分野 奨励研究員、東北大学大学院農学研究科 助教を経て現職。専門は分析化学、油化学、脂質生化学。

コメント
 油脂(脂質)の酸化は極めて複雑な機構を経て進みます。そのため油脂食品に含まれている酸化脂質とその機能性はほとんど解明されていませんでした。これまで本共同研究講座では、この複雑な脂質酸化機構の基本原理の一部を解明し、いくつかの酸化脂質に関して新たな生成経路を明らかにしてきました。引き続き酸化機構の解明に挑戦し、油脂の酸化反応を「制御」するための技術を探索していきます。

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客員教授:佐藤 俊郎(株式会社J-オイルミルズ 研究開発センター)
プロフィール
2001年 京都大学博士(農学)授与
1989年 株式会社ホーネンコーポレーション(現J-オイルミルズ)入社。ファイン研究所長、基盤研究所長を経て、現在、研究開発センター シニアマネージャー。油脂および油脂の副産物の製造技術開発・商品開発に従事。

コメント
 共同研究講座において、東北大学の先端分析技術を活用させていただき、この5年間で酸化に関する新しい知見をいくつか得ることができました。次の3年間では、これらの基礎的な知見を活かして、油脂を含む食品の課題解決につなげたいと考えています。

青木さん.jpg

青木 亮輔(株式会社J-オイルミルズ 兼 東北大学大学院農学研究科)
プロフィール
2014年 京都大学大学院 農学研究科 応用生命科学専攻 修了
2014年 株式会社J-オイルミルズ入社
研究開発センター イノベーション開発グループ 兼 東北大学大学院農学研究科。油脂および油脂の副産物の製造技術開発・商品開発に従事。

コメント
 本共同研究講座を通して油脂の酸化機構の理解をさらに深めることにより油脂の酸化反応を制御する技術を創出することを目指します。そして、その技術を用いて油脂食品のおいしさを長持ちさせることで「環境負荷の抑制」「食資源の有効活用」といった「食を通じたSDGs」に貢献したいと考えています。

■J-オイルミルズについて

株式会社J-オイルミルズ(東証プライム市場、証券コード2613)は2004 年に製油業界の3 社が統合して誕生した、味の素グループの食用油メーカーです。JOYLlogo.pngajinomoto.png オリーブオイル」をはじめとする油脂製品を主力とし、特に業務用油脂では高いシェアを誇ります。マーガリン類、油糧(ミール)、スターチ、機能性素材など幅広い事業を展開しており、プラスチック使用量を6割以上※削減した紙パックの食用油「スマートグリーンパック®」シリーズや植物性チーズ「Violife(ビオライフ)」、CFP(Carbon Footprint of Products)マークを取得した業務用の長持ち油「長徳®」シリーズなど、植物由来の原料から価値を引き出し「おいしさ×健康×低負荷」の実現を目指しています。

詳細については https://www.j-oil.com/ をご参照ください。
※ 当社計算。従来のプラスチック製の同容量帯容器と比較した場合。

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