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役員鼎談

事業活動の基盤であるESG経営の推進

初めにJ-オイルミルズのサステナビリティについて、基本的な考え方や方針についてお聞かせください。

私たちJ-オイルミルズの事業活動は、全てが植物を原料とした「あぶら」「でんぷん」「たんぱく」という人が生きるために欠かせない3つの要素を基盤としています。当社は地球環境への負荷を軽減し、持続的な循環型社会へ貢献するという取り組みに注力していくことが大切であると考え、全社的にサステナビリティを推進する体制として、サステナビリティ委員会を設置しています。当社の目指すべき未来である「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」の実現に向け、食の専門家集団である私たちだからこそできることを考え、豊かで持続可能な社会や生活の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

サステナビリティ委員会では、社会的課題について社内横断的に議論するため、傘下に「サステナブル調達・環境部会」「人権部会」「サステナブル商品開発部会」の3つの部会を有しており、議論・検討した案件を経営会議に諮問する仕組みで運営されています。さらに、四半期毎に取締役会への報告をするなど、取締役会としての関与も確保しています。

2022年度より、役員報酬の改定を実施し、役員の個人別業績目標へESG指標を組み入れました。ESG指標の一つにCO2排出量削減などの気候変動対応を設定し、役員の気候変動対策への取り組み意識を高めるなど、役員報酬とESG指標を連動させたインセンティブの導入により、ESG経営を推進していきたいと考えています。

社外取締役として、当社のサステナビリティへの取り組みをどのように評価されていらっしゃいますか。

この2~3年、ガバナンスの体制強化の一環として、社外取締役が取締役8名中5名、そのうち独立社外取締役が3名という形に取締役会の構成が強化されてきました。指名委員会や報酬委員会も、諮問委員会という形で設置され、毎月議論を繰り返しています。非常に実のある諮問委員会の存在は、すごく大きな進歩だと考えています。一方で企業は進化し続けなければいけないので、毎年、見直していく必要はあると思いますが、新しい制度ができ、着実に運用できていることは評価できると思います。
また、当社は2021年4月に新たな企業理念体系を制定しました。その際、企業理念体系と目指すべき未来を示した「Joy for Life® Map」を作成、公表しました。「Joy for Life® Map」は、企業理念の実現、当社が優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)である「環境負荷の抑制」「食資源の維持」「食を通じた健康への貢献」と、それらの基盤となる「事業継続基盤」の4領域に対して、「おいしさ」「健康」「低負荷」をキーワードに、事業活動を通じてSDGsの課題をどう解決していくのかを示しています。

企業理念体系については、2021年度に浸透活動の一環として全社員と対話の機会を設け、浸透度合いをパルスサーベイの手法で継続的にモニタリングしています。業績が厳しいなかではありましたが、例えば企業理念体系の「真摯に冒険」を取り上げると、生産系の部署において包材開発における議論が活発化してパルスサーベイのスコアが上昇するなど、企業理念体系の具現化も始まりつつあります。

また、この「Joy for Life® Map」に沿ってお話しすると、例えば地球環境と使用性に配慮した食用油「スマートグリーンパック®」は、おいしさというこれまでの価値に加え、従来の容器に比べプラスチック使用量やCO2排出量の削減を実現しました。使用後は小さく折りたたんで廃棄できるため、ごみ容積の削減にも貢献できます。このように社会課題解決につながる商品開発として一定の成果が生み出されており、サステナビリティの取り組みには進捗が見られると考えています。

これまでも食品企業の責務としてCO2排出やエネルギー使用量の低減に努めてきましたが、商品による環境負荷低減の取り組みが進んでいることは一定の成果と認識しています。「スマートグリーンパック®」以外にも長持ち油「長徳®」や、スターチ商品によるおいしく食べられる時間の延長など、お客様が当社の商品を選んで使用していただくことで同時に環境負荷の低減にもつなげることができ、まさにSDGsの達成に貢献していると考えています。

社外取締役(独立役員)小出 寛子

当社のサステナビリティへの取り組みについて、今後の課題をどのようにお考えか教えていただけますか。

サステナビリティへの取り組みのなかでも、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)において、当社ではまだ課題が多いと考えております。

社内の意識は高まっていると感じていますし、仕組みも構築されつつあります。一方、人財の獲得から育成、キャリア開発、働き方改革、評価システムなど取り組みの範囲が非常に広く、私も佐藤さん同様DE&Iについてはまだまだ課題があると見ています。特にダイバーシティでは、性別という視点だけではなく、国籍や年齢、当社以外での経験も含めての多様性が社内にあるのかという点です。当社では近年外部で経験を積まれたキャリア採用が増えています。本当はキャリア採用もDE&Iの包括的な取り組みの一つとならなければいけないのですが、まだ人財戦略レベルまでには至っていないという認識です。

私は2021年3月までアメリカで仕事をしていましたが、アメリカでは、私が在籍した企業のグループにおける上級管理職の女性割合は40%を超えていました。これは平等に機会が与えられ、最も成果を生み出した優秀な方が然るべきポジションに就いた結果であり、KPIを意識して女性を採用したというようなことではありません。私はこれが本当に目指すべき姿ではないかと思っています。機会が平等に与えられ、公平に評価されるということは非常に重要です。性別だけではなく、年齢、国籍、人種、宗教において差別することなく、機会の平等と公平な評価がなされなければなりません。DE&Iの取り組みは、非常にセンシティブな一面もありますが、企業価値の向上や優位性の確保につながる取り組みであることを自分の経験上、理解しています。従って、できるだけ早く、スピード感を持って取り組んでいきたいと思っています。

女性の管理職比率について2030年に30%とKPI目標を設定していますが、現在は6%にとどまっています。大きな目標を掲げることは大事ですが、それだけでなく毎年KPI目標を設定し、今年はどこまで進捗しているのか、していないのであれば何が要因なのか、別のアクションが必要なのか、しっかりとモニタリングをし、改善していくことが必要だと思っています。

当社は食品会社として、女性目線での商品開発やマーケティング、品質管理や安心・安全への取り組みをすることが非常に重要であると考えていますが、いま小出さんが課題としてあげられた女性管理職比率だけを見ても、これまでの当社の取り組みが目標達成に向けて必ずしも十分とは言い切れません。他社、特に海外の企業ではすでに当たり前のことではありますが、女性の工場長が生産活動のリーダーシップを発揮しているケースは多々あります。一方当社をみますと、「カシオペアW プロジェクト」の継続的な実施や全社員・階層別の研修など取り組みを進めてはいるものの、全社員向けの調査では管理職になりたいと思う女性は全女性社員の約20%で、プライベートの両立やリーダーシップ発揮への経験不足などの課題を払拭できていないという結果が出ています。また「管理職にはまだ男性が多く活躍のイメージが湧かない」という声が上げられているのも実態です。今後はさらに女性の活躍の場を広げ、多様なキャリアパスが築けることを想定した人財育成に取り組んでいく必要があると考えています。

取締役常務執行役員 生産・技術開発管掌 松本 英三

これまで以上に会社として女性の活躍の場を増やすための取り組みが必要です。取り組んだ結果として女性の管理職の方が増え、そこから成果も出て会社の企業価値が上がっていくことが理想です。当社の人員構成を見ますと、現時点では、コーポレート部門に女性が多く、生産部門や営業部門では非常に少なくなっています。例えば生産の分野でどのようにして多くの女性社員が活躍できる場を作ることができるのか、同時にどのようにしたら女性社員の方がそこで活躍したいと思ってもらえるようになるのかといったことを早く考えていかなければなりません。社員との対話の場において「営業部門や生産現場など、これまで女性が少なかった部門でも活躍している女性社員が少しずつ増えてきて活躍のイメージが湧くようになった」という声を聞くこともあります。私は機会をつくることで女性社員を後押ししていきたいと思っています。

人財は全ての基盤となる重要な資本です。当然、経営戦略の視点から目標達成に向けて必要な人財を獲得することや従業員のスキル向上を果たすことは必要です。しかし、それだけではなく当社ならではの企業文化や私たちの価値である「壁を越え、共に挑み、期待を超える」を共有できる人財を育てるという視点を持ち、ともに目指すべき未来に向かうことも重要だと思います。また、重視したい点としては若手の抜擢です。当社に限らず日本の社会には、まだまだ年功序列のカルチャーは根強く残っていると思います。そこは変えていかないといけない。もちろん、若いから良いのではなく、年齢の多様性が大切なのです。若くて優秀な方は思い切って然るべきポジションに抜擢し、タフアサインメントを通じて、将来の当社経営を担う次世代リーダーとして活躍できるような道筋を示していくべきだと考えます。

人財という観点では、当社は女性管理職の比率が低いことだけではなく、管理職の平均年齢が高くなっていることも課題の一つだと認識しています。女性管理職を増やすとともに、管理職の若返りを図ることも重要で、現在見直しを進めている中期経営計画においても人財育成という観点から従業員に「女性はもとより、若手の活躍に期待し、次世代を担う人財を育てていく」というメッセージを発信できるよう策定しているところです。また具体的な取り組みとして、実力とポテンシャルを備えた人財の登用をより加速させるため、2021年度から2022年度にかけて主に2つのことに取り組んでいます。まず、管理職登用プロセスの改定です。当社では登用前に1〜2年プレマネジメント期間を経る運用になっていますが、すでに十分な実力を備えていると認められた場合は、プレマネジメント期間を経ない登用を可能とするプロセスに変更していきます。加えて、次世代リーダー育成に向けたサクセッションプランニングにも着手しています。効果が表れるのは2023年度以降になる見込みですが、これらにとどまらず人財育成強化を継続していきたいと考えています。

代表取締役社長執行役員 佐藤 達也

当社のサステナビリティに関連して、最近の取り組みを教えてください。

サステナビリティのなかでは人権は大きなテーマの一つです。当社の従業員の人権といえば、先ほどから話にでているダイバーシティ&インクルージョン、働き方改革、意識改革などが人権への取り組みです。一方、人権は会社のなかだけのものではありません。サプライチェーンともつながり、「あぶら」の場合であれば原料の産地にある海外の農園までつながる長い過程のなかで本当に人権が守られているのか、世界に目を向けて全てトラッキングバックしていくべきテーマでもあります。J-オイルミルズがこの課題に取り組み始めていることは非常に重要な一歩だと思います。人権を尊重する基本方針はサプライヤーさんにもきちんとアナウンスをしています。ただ、そのサプライヤーさんの先の、本当に海外の農園までというレベルではこれからの取り組みになっていくのではないでしょうか。

その通りです。人権の尊重において、重要な場面として調達があります。当社では、例えばパーム油の調達においては、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)に加盟し、「パーム油調達方針」を策定することで、児童労働を含む強制労働はないか、不当な低賃金労働はないかなどトラッキングできるような調達に取り組んでいます。まだまだ課題はありますが、ビジネスパートナーと共有し、サプライチェーン全体で人権に配慮した取り組みを着実に進めています。

パーム油の調達においては、搾油工場や精製工場のトレーサビリティも100%を達成しており、RSPO認証油の購入量・比率も高まっています。一方、大豆については、一部の原産国やサプライヤーの対応も進んでいないこともあり、調達先の人権を含めてどこまで調査できるのか、問題のない原料が調達できるのかというと当社だけの取り組みでは限界があると思います。ただ、一つずつ課題をクリアし、当社としての社会的責任を果たしていくためにも今年8月に「大豆調達方針」を策定し、責任ある大豆に関する円卓会議(RTRS)へ加入いたしました。こうした取り組みは、難しくとも一歩一歩、できるところからやっていくことが大事だと考えています。継続していけばいくほどゴールも近づいてくるはずですので、きちんと活動をし、未来の社会への貢献につなげていければと思います。

サステナビリティへの取り組みは、単に社会に利益を還元するという発想ではなく、社会課題の解決や未来の社会へ貢献するということまで考えて、いかに価値を生み出し、競争力につなげていくことができるのかという点が重要だと思います。サステナビリティ自体が目的となり、KPIの達成・未達成の話に終始するのは意味がありません。当社は「食」に携わる企業として、人々の喜びや健康、環境など、社会課題の解決を通じて貢献できることはまだまだ多くあると思います。企業価値向上や競争力強化にどうつながるのかという視点で、今後も当社のサステナビリティ活動の議論をより深めていきたいと思います。

適切なプロセスを踏み、社会課題の解決や未来の社会へ貢献するということまで考えて、いかに価値を生み出し、競争力につなげていくという意味で、これは終わりがない話です。手を緩めてしまったら止まってしまいますので、さらに上を目指していくということを全員で心掛けていきたいと考えます。

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