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マネジメントメッセージ

目指すべき未来の実現に向け、新たな価値創造にチャレンジ。

2022年4月1日に代表取締役社長執行役員に就任した佐藤達也でございます。
私は職業人人生のほとんどをアメリカやドイツなどの海外拠点で過ごしてまいりました。私の経験は、J-オイルミルズにおいて異色であると思っています。その異色の経験のなかで、私が常に心掛けていることがあります。 それは「どんな環境下においても覚悟を持って責任を果たしていく」ということです。
人は誰しも置かれる環境を選ぶことはできません。どのような環境に置かれても、成果を生み出すためにどんなパフォーマンスができるのかを精一杯考え、懸命に行動することが重要です。もちろん必ずしも良い結果ばかりがでる とは限りません。しかし、結果は結果として受け止め、それを学びとして、将来に活かしていくことがあらゆる場面において非常に大切だと考えています。
物事には良い面と悪い面の二面性があります。悪い面を恐れて挑戦しないのではなく、良い面を信じ、恐れずに挑戦することで新しい価値を生み出していけると思っています。これまで取り組んでこなかった事に勇気をもって踏み出し、実行していくことが、当社にとってプラスになるはずです。組織に変化を促すことがまさに自分に課せられた役割であり、ステークホルダーの皆さま、社員からも期待されることであると認識しています。
生活に欠かせない「あぶら」を原点に、自然の恵みから可能性を引き出し、人に真摯に寄り添い貢献していくこと。これこそが私たちの価値・存在意義です。どのような時も領域や常識、限界の壁を越えて仲間とつながり、ともに挑戦いたします。目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」の実現に向け、私たちは将来にわたって社会に価値を創出していけるよう邁進してまいります。

佐藤 達也
代表取締役社長執行役員

Profile
  • 1983年4月 味の素株式会社入社
  • 2016年7月 味の素ノースアメリカ社社長
  • 2017年6月 味の素株式会社理事
  • 2018年7月 同社北米本部長
  • 2018年7月 味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ社社長
  • 2019年6月 味の素株式会社常務執行役員
  • 2021年4月 当社専務執行役員コーポレート管掌
  • 2021年6月 当社取締役
  • 2022年4月 当社代表取締役社長執行役員(現任)

当社は歴史的といえる厳しい事業環境に直面していますが、第六期中期経営計画の根本となる目指すべき姿や方向性について大きく変更することは考えていません。

企業理念体系の具現化に向けて

2021年4月、当社は私たちが目指すべき未来(ビジョン)、私たちの使命(ミッション)、私たちの価値や存在意義(バリュー/パーパス)をあらわした企業理念体系「JoyforLife®-食で未来によろこびを-」を制定しました。食品会社が提供する根源的な価値である「おいしさ」や「人々の健康」に加え、「低負荷」という視点からも、お客様や社会・環境が抱える課題にアプローチし、より良い社会に貢献していくことで、未来のよろこびを増やしたいという想いを込めています。この企業理念体系ですが、ただ掲げるだけでは社内に浸透していきません。当社では企業理念体系を軸にしたコミュニケーション活動を定期的に開催し、どれだけ社員に浸透しているのかを四半期毎のパルスサーベイによってモニタリングしています。その結果を見ると、制定から1年が経ちましたが、企業理念体系の理解が進み、社員の間で浸透してきていることがわかりました。しかしながら、企業理念体系と業務の連動にはまだまだ課題があり、社員が企業理念体系を自分事化する途上であるということもわかりました。
私は、社員が同じ目標に向かって目線をあわせ、力をあわせて行動することがとても重要であると考えています。社員が同じ目標に向かうためにはどうすればよいのか。さらに力をあわせて行動するためにはどうすればよいのか。これまでの経験のなかから私が導き出した答えの一つが「対話」をすることです。2022年4月に社長に就任し、まず初めに当社の全部署、全拠点を訪問することを決めました。本社はもちろんのこと、支社、支店、工場と可能な限り足を運び、100回を超える対話を行いました。
対話を通して、当社は歴史が長く、先輩諸氏が生み出したさまざまな工夫をしっかりと受け継ぐ非常によい会社であると改めて感じました。社員各人が、各々の専門性を究め、優しく、まじめでよく働く、優秀な人財が多いと思いました。一方で遠慮深く大人しくて、積極的な発言が少ないとも感じました。そのため、私は社員との対話では「遠慮する必要はない。一歩踏み出し、積極的にチャレンジしていこう。」と繰り返し伝えています。そして、自分の考えていることを発信してほしいとお話ししています。新しいことにチャレンジすることで変化を起こしていく、その変化がプラスになり、結果がでてくると素晴らしいと考えています。変化を促していくことが、私に課せられた役割であると認識しています。
「対話」には終わりがありません。どれだけ実施したから良いというものではなく、コミュニケーションを継続していくことが大切です。2021年度の業績は当社にとって非常に不本意な結果となりましたが、この苦しいときこそ、まさに同じ目標に向かって力を合わせて行動するチャンスであり、全社員が企業理念体系にて掲げているビジョン・ミッション・バリュー/パーパスを自分事とし、一丸となって日常のなかで取り組みを進めていく必要があると考えています。

中期経営計画の見直し

2022年5月、第六期中期経営計画の見直しを発表しました。策定当時に比べて、大きく事業環境が変わり、それに応じて、見直すべきところは見直さなければならないという考えに至ったためです。見直しの大きな要因の一つは、原料相場の高騰です。バイオ燃料向けなど世界的な植物油の需要の拡大や天候やコロナ禍による人出不足など複合的要因による需給ひっ迫に加え、2021年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、大豆、菜種、とうもろこし、小麦といった原料全般の価格が急騰し、3月には史上最高値を更新しました。さらにドル円の為替レートは、2021年4月の1米ドル108円付近から、コロナ後の米国経済の回復期待による株高や米金利の上昇、米国金融政策の正常化へ向けた動きなどを受け、円安ドル高傾向が継続しています。急激な原料相場の上昇と円安の影響は大きく、今後の見通しについても当面は不透明な状況が続くと見ています。
当社が歴史的といえる厳しい事業環境に直面しているため、第六期中期経営計画に関する考え方について、多くの方から質問をいただいていますが、中期経営計画の根本となる目指すべき姿や方向性について大きく変更することは考えていません。 一方で、当社が掲げた中期経営計画のもと、2021年度に取り組んできたことについては、上手くいったことや上手くいかなかったことは何であったのか、その理由も含めて検証が必要です。また、当社の事業のなかでも多くの利益を生み出している事業もあれば、そうでない事業もあります。事業環境が厳しくなるなかで、限られた時間のなかではありますが、これらの事業をどう位置付けていくのかといったポートフォリオの精査も必要だと考えています。

当期の取り組み

当社の収益改善の取り組みのなかで、優先順位として高いのは、油脂事業の安定的な収益の確保です。天候や世界的な需要増にともなう原料相場の高騰も問題ですが、ロシアとウクライナの問題も長期化しており、食料の地政学リスクが浮き彫りになったことで、すでに欧州、アフリカ、中近東などでは供給不足に対する不安が高まっています。つまり、気候変動、エネルギー、物流といった諸問題による原料価格の高騰、さらに昨今の世界情勢も相まて、食用油そのもの、あるいは原料の需給のひっ迫という状況が多方面に影響を与えています。
当社も例外なくこの影響を受けており、マイナスの影響をできる限り緩和させなければなりません。収益の足元を固めるという意味で、原料価格高騰への対応は、今までにやったことがない奇策を打つことよりもまずはコスト削減と価格改定です。油脂事業は原価に占める原料割合が圧倒的に高いため、原料価格の上昇分は適切に価格に反映せざるを得ません。2021年から原料価格の高騰が続いていますので、お客様には度重なる価格改定をお願いしています。これまでは、原料価格の上昇を後追いする形で価格改定をお願いしていたため、コスト増を吸収しきれず、結果として利益目標が未達となりました。この反省を踏まえ、2022年度は、原料価格の上昇と商品価格改定のタイムラグを縮める値決め方式を採用していただくといったお願いをすることで、少しずつ適切な価格に近付けています。原料の需給がひっ迫し、原料価格も高騰するなか、品質の高い商品を安定的に供給するという当社の極めて重要な社会的責任を果たすために、十分に検討を重ね、取り組んでいます。またコスト削減にも真剣に取り組んでいます。社内のあらゆる部門において、また生産や物流の過程において無駄やロスが発生していないか改めて見直しています。この見直しにより、コストに対する社員の意識が変わってきていますので、継続することにより着実に削減の成果は表れてくるものと考えています。また全社を通して、事業、ヒト、インフラの3つの視点から、企業価値向上に向け、デジタルトランスフォーメーション(DX)の変革にも取り組んでいます。
他方、前中期経営計画より、当社は安定的な収益の向上を目的に高付加価値品の販売を強化してきました。原料相場の急激な高騰に加え、新型コロナウイルス感染症拡大により人々の生活様式が一変し、特に当社の売上構成比率の高い業務用のお客様である外食産業は、緊急事態宣言やまん延防止法の適用により、大きな影響を受けました。このように業務用のお客様が苦しい状況においては、お客様の課題解決につながる長持ち油「長徳®」シリーズの提案を強化しています。「長徳®」シリーズは、当社が高付加価値品と位置付けている商品で、従来の油と比較すると劣化が少ないため、調理現場でのコストや油を切替える手間が削減できるという物理的なメリットが大きい商品です。また、油を長く使えることにより、原料使用量の削減や輸送といったサプライチェーン全体でのCO2排出削減効果が認められるなど環境負荷の低減、当社が掲げる持続可能な社会への貢献という大きな目標にも寄与しています。
家庭用食用油の最近の傾向の一つにキャノーラ油やサラダ油などの汎用油とオリーブオイルやこめ油などの高付加価値品との価格差の縮小というものがあります。これは、汎用油の原料である大豆や菜種の価格高騰による影響の一つなのですが、価格差が縮まったことで、マーケットでは汎用油ではない少しプレミアムな「あぶら」を試してみようという生活者が増えています。当社においても、同様の傾向が見られ、こめ油等の販売量が増えています。このように外部環境から受ける「影響」は一方向ではありません。当社にとって原料価格高騰によるマイナスのインパクトはもちろん大きいですが、ビジネスチャンスの拡大というプラスに働く現象も出てきています。見方を変え、発想を転換することで厳しい環境を自分たちのチャンスとして捉えることができるはずです。ニーズを的確に捉え、積極的な提案を通じて高付加価値品のさらなる拡大を図っていきたいと思っています。

サステナビリティへの取り組み

いま企業には、経済的価値と同時に社会・環境的価値の創出が求められています。私たちが対応すべき課題は多岐にわたりますが、当社では事業基盤を強化する一方で、成長戦略の一環としてサステナビリティの観点から社会的・環境的価値を重視した取り組みを進めています。サプライチェーン全体での気候変動対策を最重要事項と位置づけ、2022年2月にサステナビリティ委員会内の「環境部会」と「サステナブル調達部会」を統合し、「サステナブル調達・環境部会」とするなど当社のビジネスモデルに即した体制強化を図りました。また、2020年11月から気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)による提言に賛同し、TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示を進めるとともに、TCFDコンソーシアムに参画しました。当社は地球環境の保全と持続可能な社会の実現を目指し、2030年までにプラスチック廃棄物ゼロ化、CO2排出量削減についても、2013年度対比で50%削減(Scope1,2)、2050年度までにカーボンニュートラルの実現を目標としています。サステナブル調達においては、環境や人権への配慮、品質と安全を確保したサプライチェーンの構築に努めています。2020年に「人権方針」、「パーム油調達方針」の制定と「サステナブル調達方針・基準」を改訂したほか、2011年より加盟している持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)に加え、当社の重要な原料の一つである大豆についても、環境や人権に配慮した持続可能な調達を行うため、2022年8月に「大豆調達方針」を定め、持続可能な大豆のための円卓会議(RTRS)に加盟しています。
事業のうえでも、環境負荷低減を具体化した商品を通じて、持続可能な社会の実現を目指す取り組みを強化しています。例えば、紙パックを採用した家庭用油脂商品「スマートグリーンパック®」シリーズでは、商品に使われる容器は、従来の容器に比べ、プラスチック使用量を60%以上削減し、CO2排出量約26%以上の削減が期待でき、環境負荷の低減が見込まれます。このシリーズは、お客様の環境への関心の高まりもあり、取扱店が順次拡大しています。また、プラントベースチーズ(植物生まれのチーズ)である「Violife」(ビオライフ)は、ココナッツオイルなどの植物を主原料とし、アレルギー物質28品目を使用していないため、ヴィーガンやベジタリアン、乳アレルギーをお持ちの方が安心して食事を楽しめる商品です。環境への配慮という面においては、生産から廃棄までのライフサイクルにおけるCO2排出量が、国内で販売される乳製品チーズの30%以下、必要な土地占有面積も25%以下に抑えられています。「Violife」が市場に参入した後は、家庭用植物性チーズ市場が活性化し、約2.3倍に大きく伸長するなど、サステナビリティ面での貢献のみならず、事業面でも成果が期待できます。持続可能な社会へのニーズが高まっていくなか、当社も事業を通じて、企業としての社会的責任を果たしていくことがますます重要になっていくと考えています。

変化を恐れず、当社グループが一丸となって、
いまやるべきことを着実にやり抜いていくことで、
必ず結果はついてきます。

日清オイリオグループ株式会社との業務提携

グローバルな潮流を見ると、世界的な人口の増加による食料需要の急増や気候変動による農作物の供給リスクが高まり、食料需給のひっ迫は現実のものとなりつつあります。
今後、環太平洋パートナーシップ(以下、TPP)協定などの貿易協定の進展や食資源の確保における国際競争が激化することが予想されますが、日本国内だけに注目すると様相は異なり、人口減少や少子高齢化が顕著で食料需要は減少トレンドです。つまり、グローバルと国内では対極する状況に直面していますが、この二律背反は当社だけでなく日本の食品業界全体の課題であるというのが私たちの認識です。このようななかで、日清オイリオグループ株式会社と当社は、油脂・油粕の安定的な供給を将来にわたって継続していく道を模索しはじめました。両社とも、「国際競争力の強化に加え、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強力に推進すべきである」と同じように考えています。
この共通認識の下、搾油工程(原油と油粕の製造)における業務提携に合意し、2021年5月にこの先長期にわたる搾油の安定供給体制を構築するために、国内搾油機能の全国統合を見据えた検討を開始しました。西日本エリアにおいては、岡山県倉敷市にある両社の搾油工場を対象とした共同出資による搾油合弁会社設立の具体的な検討がすでにはじまっています。両社の搾油ラインを一つの製造会社に集約することで生産効率を上げ、安定的な供給を持続的に可能とする体制づくりや製造技術革新による脱炭素社会への取り組み、AIやIoTの活用によるスマートファクトリー化など、次世代型搾油工場を目指し、関係当局と相談をしながら検討を進めています。今回の業務提携における取り組みは、中長期的な視点に立った大きな価値がある取り組みであり、そのためにも今後は他の拠点も含め、スピード感をもって検討を進めていきます。

今後に向けて

2021年度は非常に厳しい事業環境となり、業績についても不本意な結果となりました。しかしながら、この厳しい事業環境は、当社の足りない部分や弱点をあぶり出す「機会」になったと思っています。私たちはいま、企業価値向上に向け、いかに迅速に、的確に、事業に取り組んでいけるかを問われています。この機会をばねに、今後の飛躍を目指してまいります。変化を恐れず、当社グループが一丸となって、いまやるべきことを着実にやり抜いていくことで、必ず結果はついてきます。ステークホルダーの皆さまには、当社グループの今後に期待していただきたいと思います。
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