このページの本文に移動します

第三者意見

本第三者意見は昨年版のコメントを踏まえた意見交換を経て執筆しています。意見交換には佐藤社長はじめ関係各位が出席され、情報開示に対する熱意が伝わりました。また、コメントの指摘事項に対して対応案が提示され、本レポートの人権、DX、WEBの人的資本情報などに反映されています。こうしたレポートの継続的な改善への真摯な対応は必ずや読者の期待に応えるものになると確信するとともに、私自身の重責を再認識する次第です。
昨年、私はVUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)の状況下、変革への強い意志が伝わるレポートと評しました。本年はその意志をどのように具現化していくのか道筋が示されています。未来研究所(Institute for the Future)の社会学者ボブ・ヨハンセン(Bob Johansen)氏は「リーダーとは、予測の持つ本来的な価値を正しく理解し、脅威のVUCAを、『予見→洞察→行動のループ』を通じて、希望の持てる機会のVUCA(Vision:ビジョン、Understanding:理解、Clarity:明瞭さ、Agility:機敏さ)に転換していく人のことをいう」としています。こうした、VUCAのポジティブな解釈は社長メッセージやダイアログでの取締役の発言の随所に見ることができます。見直される中期経営計画にそれらが反映されることを期待します。
「目指すべき未来に向けたESG経営」(昨年は、J-オイルミルズの事業とESG経営)のタイトルに象徴されるようにESG経営の進捗がマテリアリティを軸に丁寧に報告されており、ESG経営の本気度は一層鮮明になりました。また、ESG個別においても多くの進展が見られます。印象に残った点は以下の通りです。
Eでは、TCFD提言に対応した開示の進捗、2030年までにプラスチック廃棄物ゼロ化目標の策定、Sでは大豆調達方針の策定とRTRSの加盟、ISO30414に沿った開示(WEB)、Gでは役員の個人別目標へのESG指標の組み入れ、などです。また、ESGデータ(WEB)の詳細化も高く評価できます。
今後、ESG経営の深耕を明らかにするため、個別事象やデータの開示が増えることが予想されますが、その際に留意する点が3点あると考えます。第1はガイドラインに沿うだけでなく、自社の事業環境における重要事項を独自性のある開示に心がけることです。第2は開示項目については経営戦略や経営課題との整合性を意識し、それらが価値創造、毀損にどのような影響を与えるか、を考慮して選択すべきと考えます。統合報告フレームワークの指導原則の一つである「情報の結合性」には「統合報告書は、組織の長期にわたる価値創造能力に影響を与える要因の組合せ、相互関連性、及び相互関係の全体像を示す」とあります。第3は、これらの非財務情報が財務情報に転換していくという「未財務情報」という視点を堅持することです。ここ数年、ESGへの取り組みや投資が一定の時間軸を経て財務にどのように影響してくるのか、試算が始まっています。
最後に自然資本に大きく依存している企業であることから現在進行中のTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に大きな関心を抱いていただきたいと思います。最終的な提言は2023年9月に予定されていますが、すでにβ版(V0.1)が公表されていますので早期に対応への準備に入っていただきたいと考えます。
  • 特定非営利活動法人 循環型社会研究会 理事
    山口民雄
  • 循環型社会研究会:
    次世代に継承すべき自然生態系と調和した社会の在り方を地球的視点から考察し、地域における市民、事業者、行政の循環型社会形成に向けた取り組みの研究、支援、実践を行うことを目的とする市民団体。研究会内のサステナビリティワークショップで、報告書のあるべき姿を研究し、提言している。

    WEBサイト
    http://junkanken.com/
J-オイルミルズレポート2022 TOPへ戻る