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役員鼎談

企業価値向上に向けた課題認識と貢献

事業環境が激しく変化するなかで、当社の企業価値向上に向けた課題認識や
問題提起をはじめ、これまでの経験や専門性を通じた貢献について議論しました。

ご自身のキャリアを踏まえて社外取締役として、 どのような視点から企業価値向上への貢献をお考えですか?

私は証券会社で国内・海外で勤務し、また資産運用会社でも勤務し、一貫して資本市場の仕事に携わってきたキャリアから、投資家の目線を意識したアドバイスとモニタリングをしています。この数年は、事業環境の劇的な変化がありました。
取締役会でも、原料や為替相場に翻弄される事業構造から当社が脱却するためにはどうするべきか、こうした厳しい事業環境のなかでも本業でキャッシュを稼ぐには何をしなければならないのかという課題を、私を含む社外取締役が毎回のように提起しています。例えば、工場の稼働率を高めるための施策、営業力の強化、イノベーションの必要性、人財ポートフォリオの考え方、原料や為替相場のボラティリティへの対応、生活者目線の商品開発、海外、特にマレーシア工場の活用、搾油事業の在り方など、さまざまな側面から議論を行っています。

私のキャリアにおいては、主に事業戦略やマーケティング、イノベーション、組織構築、例えば経営体制の整備や人財育成の仕組みを作るということを経験してきたので、そのような視点から助言をしています。当社は細かい施策の積み上げで数値目標を作成する傾向があります。私は、事業ポートフォリオの戦略を策定してきた経験を踏まえ、そもそも当社はどういう会社になりたいのかという中長期の視点から事業の将来を考えていく重要性について、議論を投げかけています。

私自身のキャリアを踏まえた当社への貢献は、会社経営の経験になります。当社の社外取締役を引き受けようと思ったのは、まず、私も当社と同様に統合会社でキャリアを築いてきたためです。そして、事業内容においても海外から原料を輸入して精製して販売するというビジネスと、海外の原料市況と国内の販売市況の違いを考慮しながら価格エクスポージャーを管理しなければいけない点が全く同じであり、その経験をもとに貢献できると考えたからです。製造業では、輸入をする部署、製品を作る部署、それを運ぶ部署、そして販売する部署でサイロ化するリスクがあるため、各部署が着実に連携して、常に全社最適の視点で解を求め続けるよう経営メンバーに働きかけています。

具体的に、どのような働きかけや問題提起をされていますか?

私の経験を踏まえた観点では、投資家の期待に応えて株価を継続的に上げていくためには、他社との差別化ポイントはどこなのか、売上や利益のダウンサイドリスクのマネジメントをどのように行うべきなのか、キャッシュを創出するにはどうしたら良いのか、事業の収益性や成長性を高めるためにイノベーションをどのようにして喚起するのかなど、少数株主の目線で議論を展開しています。また、一般的にアナリストはアップサイドのポテンシャルとダウンサイドのコンセンサスが非対称性になっていると、株の上昇余地が高くなると考えます。利益成長が株価の上昇につながるという意味では、株式市場でコンセンサスとなっている見方に対して、当社の施策がどう見えるのかということを常に考えています。執行側から提案される戦略についても、社会や経済の中長期的な構造変化を踏まえたうえで策定されているかどうかをチェックするなど、全般的なアナリストの考え方を参考に検証しています。

先ほども指摘したように常に中長期の視点を意識しないと、今あるものの改善で少しずつ売り上げを増やすというマインドセットから抜け切れないままになってしまうと危惧しています。当社の目指す姿が、油の会社として存続することを前提とするのか、例えば食品全般を取り扱う会社となることを目指すのかを考え、具体的なプランを策定していかないと、目先の延長線上だけの議論になってしまう懸念があります。イノベーションに関するポートフォリオマネジメントにおける経営資源の配分や、それに対する投資リターンの評価ということを手掛けていた自分自身の経験から、当社はR&Dをビジネスに展開する際のスキームに改善の余地があるため、本来あるべき姿に向けたアドバイスや取り組みについて働きかけをしています。

例えば、昨年の統合報告書でも申し上げましたが、急激に変化する事業環境における中期経営計画は、計画自体を所与のものとして実行していくのではなく、状況に合わせて適切に見直していくことが大事だと考え、取締役会でも提言しています。

当社の経営方針についての提言に加え、コストの認識に関する指摘をする場合もあります。例えば、販売価格や原材料価格の変動は損益計算書を通して分かりやすく表に出ますが、過剰な在庫に起因するコストはなかなか表に出にくい。工場にある原料も、原料として見るのではなく、コストの視点で見る必要があると指摘しています。海外から原料を仕入れて販売する事業のため、エクスポージャーの管理についてもアドバイスしています。海外の原料市況によって損益計算書が棄損したり、あるいは努力もしてないのに収益が向上することもありますがそれに対してどうヘッジをかけていくのか、あるいは海外の原料市況が高騰したときにどうやって販売価格に反映していくのか、この点についてはかなり強く議論を促しています。

厳しい事業環境のなか、今後の企業価値向上に向けて、何を変えていくべきなのか、もしくは何が変わったのか、皆さまのご認識についてお聞かせください。

私が社外取締役に就任してから1年が経過しました。当社は、3社の統合会社なのでさまざまな価値観や考え方をもった人たちが集まるという意味でダイバーシティはありますが、その皆さんがしっかり話し合って、革新的なアイデアをだしていくインクルージョンができていないという課題があります。まずはトップマネジメントが、より一体感を持ってリーダーシップを発揮しているかどうかが重要だと思います。そのためにも、マネジメントチームが参加するオフサイトミーティングの機会を設けるよう提言しました。

オフサイトミーティングを実施することは他社でもあると思いますが、重要な点は、参加者一人ひとりが腹落ち感のあるかたちでミーティングの目的を理解し議論の意義を実感できるような内容にすることです。そのために当社のオフサイトミーティングでは、外部の専門家にファシリテーター(進行役)をお願いしました。出席者が自由に話し合ってしまうと、すぐに今日、明日の解決策を考える方向に行きがちになるため、本来の議論の目的である「会社をいかに変革していくか」というところになかなか行き着きません。今回は、ファシリテーター(進行役)の力を借りて、参加者がより長期的な視点で当社をどのように良くしていくか、新しくしていくかという議論を効果的に進めました。

見直し後の第六期中期経営計画の目標達成に向けて、2023年7月に機構改正を行いました。組織を機能別に再編し、CxO制の導入によって執行責任を明確化しています。私は昨年の統合報告書で「2番手には2番手の戦略がある。何かに秀でたイノベーティブな商品やサービスを生み出す組織、社風が大切。」と申し上げました。業界2番手の企業は、開発や製造、販売などにおいて、トップ企業とは違ったユニークな特長を持つ必要があります。しかし、当社にはそのユニークさが感じられないことが課題でした。ここが、今後当社が成長していくために重要なポイントだと思っています。従業員一人ひとりは、非常に優秀な方が多いです。ただ、多くの優秀な人財がチームとして大きな成果を上げるという点で課題があったと思います。

従業員エンゲージメントにおいても、亀岡さんが指摘されたように、優秀な人財はいるけれども、能力を引き出せていない傾向があることが分かっています。経営陣が双方向のコミュニケーションをより活発化させており、その動向については社外取締役として注視しています。

製造現場や色々なところで従業員と話をしますが、みんな非常にしっかりしています。優秀な人財をどのようにチームとしてビジネスに巻き込んでスピード感を持って、実際に進めていくかがポイントだと考えています。

今回の機構改正によって、全体最適を意識して皆が働き始めれば、自分の仕事がどこにつながり、どのような成果に貢献しているのかが見えてくるようになるはずです。また、人財育成という機運が高まるため、適切にキャリアプランを作成して育てていく。そして、正しく評価して、色々な経験を積んでもらうことが重要です。それが上手く動き出せば、従業員のモチベーションもエンゲージメントも上がっていくと思います。

人財という点で、当社では女性活躍についても議論を進めています。女性管理職比率の目標達成が目的ではなく、本来の目的は、会社がより成長・発展するためには、どのような人財をどのように活用するのかということが重要で、どうやって女性従業員が活躍できる環境を整備するかが重要です。特に当社のBtoCビジネスのメインのお客さまは女性が多いため、ビジネスモデルのなかで女性の活躍は非常に大切です。いかに女性従業員に色々なところで活躍してもらうかは当社の伸びしろを決める大きな要素の一つだと思います。

別の視点からになりますが、私は、これまで女性活躍推進をテーマにした「カシオペアWプロジェクト」をサポートしています。2022年度はそれに加えてカシオペア経営塾という女性管理職候補の育成を目的としたプロジェクトがスタートしました。オンラインを中心にメンバーが集まり、いくつかのビジネスプロジェクトを実際に渡されて、取り組み、最後は役員にプレゼンテーションを行いました。私たち社外取締役の3人も最後のプレゼンテーションに参加し、ビジネスプランについて講評しました。終わった後には直接参加者の方々と懇親をしましたが、モチベーションの向上や多様な層を育成していくという点で、非常に重要な第一歩になったと思います。実際に管理職への若手の抜擢も進んでいます。

話題は変わりますが、私が考える課題の一つは、今は営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになっており、投資資金の確保がなかなか厳しい状況だということです。業務用油脂が持ち直しているなか、キャッシュをどうやって創出するかという観点から、当社の独自技術「SUSTEC®」(サステック)を用いた長持ち油「長徳®」シリーズとAIを活用した業務支援システムを組み合わせることで、さらに幅広いお客さまにご利用いただくなど、当社の強みを活かしていくことが必要だと考えています。取締役会で指摘してきたもう一つの課題である営業戦略ですが、一段と精緻なマーケット分析と対策が奏功し始め、新たに当社製品の取り扱いをしていただける小売店やスーパーマーケットの開拓が進むなど成果を上げています。

当社は、BtoBだけでなく、BtoCのビジネスを持っています。BtoCは、直接お客さまと接しているので、販売スタッフがお客さまからいただいたご意見やご要望を、どれだけ商品開発に活かせるか、ここのスピードとクオリティが問われていると思います。そういう意味では、先ほどお話しした今回の機構改正での狙いである部署間・担当者間での連携により、お客さまに価格だけではなく、当社のノウハウやクオリティといった付加価値部分でさらに評価していただけるようにしていくということが重要です。

最後にステークホルダーの皆さまに向けてメッセージをお願いします。

経営陣による課題認識や成長していくための方向性、人財の育成・配置という要素が複合的に、良い組み合わせで動こうとしています。企業価値の向上に向けて、本当にここから期待できると思っているので、応援していただければと思います。

以前は変革を恐れていた部分があったと思いますが、今は変革しなければいけないという機運が高まっています。機構改正によって組織体制も整ってきていますし、佐藤社長も変革を恐れないタイプで、変える必要があるものは変えていこうという姿勢なので、それにみんな勇気づけられていることもあると思います。ベクトルが同じ方向を向き始めているので、これからが楽しみです。

佐藤社長が現場に出て、直接従業員の皆さんと対話をしています。そういう取り組みによって、マネジメントのメッセージが浸透してきたということもあると思います。先ほどお話ししたインクルージョンを積極的に推し進めることにより、全従業員の知恵とノウハウが結集され、飛躍的に伸びる素地が当社にはあります。今後に期待していただきたいと思います。

社外取締役(独立役員)小出 寛子
Profile
  • 1993年5月

    日本リーバ株式会社(現ユニリーバ・ジャパン株式会社)入社

  • 2001年4月

    同社取締役(2006年3月退任)

  • 2006年4月

    マスターフーズ リミテッド(現マースジャパン リミテッド)マーケティング統括本部長

  • 2008年4月

    同社COO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)(2010年8月退任)

  • 2010年11月

    パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン株式会社代表取締役社長(2012年1月退任)

  • 2013年1月

    キリン株式会社社外取締役(2018年3月退任)

  • 2013年4月

    Newell Rubbermaid Inc. (米国)(現Newell Brands In(米国))グローバル・マーケティング シニア・ヴァイス・プレジデント(2018年2月退任)

  • 2016年6月

    三菱電機株式会社社外取締役(現任)

  • 2019年6月

    本田技研工業株式会社社外取締役(2021年6月退任)

  • 2019年6月

    当社社外取締役(現任)

  • 2021年5月

    J.フロント リテイリング株式会社社外取締役(現任)

社外取締役(独立役員)石田 友豪
Profile
  • 1979年4月

    野村證券株式会社入社

  • 1997年11月

    ノムラ・イタリア・S.I.M.p.A. 代表取締役社長

  • 2004年4月

    野村ホールディングス株式会社執行役

  • 2005年4月

    ノムラ・ヨーロッパホールディングスplc 取締役社長・CEO

  • 2008年4月

    野村ホールディングス株式会社常務執行役

  • 2009年4月

    野村アセットマネジメント株式会社執行役専務

  • 2011年6月

    同社取締役・COO兼執行役社長(2012年8月退任)

  • 2014年1月

    ラザード・ジャパン・アセット・マネージメント株式会社代表取締役社長(現任)

  • 2019年6月

    当社社外取締役(現任)

社外取締役(独立役員)亀岡 剛
Profile
  • 1979年4月

    シェル石油株式会社入社

  • 2006年3月

    同社執行役員近畿支店長

  • 2008年11月

    同社執行役員本社販売部長

  • 2009年3月

    同社常務執行役員

  • 2013年3月

    同社執行役員副社長 石油事業COO

  • 2015年3月

    同社代表取締役社長グループCEO(2019年4月退任)

  • 2019年4月

    出光興産株式会社代表取締役副会長執行役員(2020年6月退任)

  • 2020年6月

    同社特別顧問(2022年6月退任)

  • 2021年6月

    川崎汽船株式会社社外取締役(2023年6月退任)

  • 2022年6月

    当社社外取締役(現任)

  • 2023年6月

    双日株式会社社外取締役(現任)

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