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おいしさ、食感、香りを演出 品質向上と低負荷を両立するJ-オイルミルズのテクスチャーデザインとは

スターチ製品

おいしさ、食感、香りを演出
品質向上と低負荷を両立する
J-オイルミルズの
テクスチャーデザインとは

加工食品や中食惣菜、外食のトレンドがめまぐるしく変化し、消費者の食に対する嗜好や形態が多様化・高度化するなかで、おいしさ・食感を多種多様にコントロールするスターチ(でんぷん)の役割が注目されている。
J-オイルミルズは2020年にスターチ事業をテクスチャーデザイン事業に名称変更し、独自の加工技術と多様な原料素材を掛け合わせた開発・提案を強化。従来の素材では実現できない新たなテクスチャーを創出する業務用スターチの新ブランド「TXdeSIGN(テクスデザイン)®」を立ち上げ、お客様の課題解決につながるソリューションを展開している。おいしさと健康、そして環境や人への低負荷に貢献するテクスチャー事業の可能性をまとめた。

プロフィール

  • 松本俊介 氏 松本俊介 氏
    事業本部
    テクスチャーデザインマーケティング部商品開発グループ
    (兼)商品企画グループ
  • 加藤健太 氏 加藤健太 氏
    事業本部
    テクスチャーデザインマーケティング部商品企画グループ
    (兼)ソリューション事業部アカウント部カスタマーリンケージグループ
  • 橋本和紀 氏 橋本和紀 氏
    研究開発センター
    イノベーション開発グループ

製品情報

スターチ製品
コーンスターチやタピオカでんぷん等をベースに通常のでんぷんとしての用途に加え、ジューシーさの実現、コク味の向上、食感の改良、経時劣化の抑制など、食品の機能性をさらに向上させる特長を活かし、幅広いご提案を行っています。

JOYLのテクスチャー事業

油脂とスターチを組み合わせ
独自技術で新たな価値を創造

植物油やマーガリン、スターチ、タンパクなど植物由来の多様な製品・素材を取り扱うJ-オイルミルズ。業務用・加工用・家庭用のフルチャネルで幅広い顧客接点を持ち、独自の技術力とさまざまな素材を組み合わせた「おいしさデザイン®」を通じて、お客さまニーズをカタチにする最適なソリューションを展開している。
スターチ事業の始まりは、1950年代にさかのぼる。当時、日本では馬鈴薯でんぷんが主流だった中で、米国で広がりをみせていたトウモロコシ由来のコーンスターチに着目。日本での製造販売を開始した。
テクスチャーデザインマーケティング部の松本氏は「当社は油の会社として知られていますが、半世紀以上前から食品用のスターチを製造・販売してきました。おいしさを支える油脂と、食感をコントロールするスターチを手掛けていることは、”おいしさデザイン®”を掲げる当社の強みであり、長年培った独自の加工技術を活かし、でんぷんを主体に幅広い原料を組み合わせた素材開発を強化しています」と語る。
スターチ(でんぷん)は、食感の改良や保存性の向上、原料コスト低減などさまざまな目的で食品加工分野では広く使われているが、同社では独自技術によって高機能なでんぷんを開発。通常のでんぷんとしての用途に加え、ジューシーさの実現やコク味の向上、食感改良、経時劣化の抑制など、お客様の課題解決につながる提案活動を行っている。

新たなテクスチャーを実現
TXdeSIGNシリーズ

油脂とスターチ。おいしさと食感を支える両方の素材を持っていることがJ-オイルの強みだが、それを象徴する製品がある。水と油を両方吸収する特長を持つ業務用スターチ製品「ネオトラスト®」だ。
通常のでんぷんは基本的に水しか吸わないが、「ネオトラスト®」は独自の加工技術によって水と油を保持し、これまでにない新たなおいしさと食感を付与することができる。

ハンバーグ内部での機能イメージ
ハンバーグ内部での機能イメージ

そのほか、チーズのように自然な伸展性※や乳製品に濃厚感を付与する「エクステン」、野菜を煮込んだような繊維感を付与できる「フィブレ」、香辛料などの揮発しやすい香気成分を閉じこめ出来立てのおいしさを維持する「フレバスト」など、さまざまな調理シーンや食品加工で新たなおいしさを付与するテクスチャー素材のラインアップを拡充。これらの付加価値製品は「TXdeSIGN(テクスデザイン)®」シリーズとしてブランド展開を強化し、用途に応じたアプリケーション提案でお客様の課題解決に貢献している。

※独特な伸び、粘りなどの粘弾性

テクスチャーの提供価値

おいしさと低負荷を両立

TXdeSIGN_EXTEN_logo

実際に、商品開発の現場でテクスチャー素材はどのように活用されているのか。
カスタマーリンケージグループ(CLG)の加藤氏は、「CLGでは営業担当者と連携し、お客さまの課題やニーズをヒアリングし、商品開発や技術開発をサポートする役割を担っています。当社は油脂を通じて業務用・加工用の幅広いお客様と取引があり、油とスターチ両面でお役立ちできる場面が広がっています」と語る。 この数年の原料価格高騰、天候異変や感染症による供給不安で、食品メーカーは商品価格や規格変更を余儀なくされている。卵や畜肉・水産資源の不足も深刻化する中で、「お客さまが抱えている課題に対して、テクスチャー素材でおいしさや食感をサポートする提案を重ねています。コストダウンや不足する原料素材の代替だけでなく、商品の価値向上につながる提案に力を入れています」という。
例えば、中食惣菜の現場では、唐揚げのお肉に、保水効果に優れた「ハイトラスト®」を浸透させたり、コーティングすることによって、肉の水分を逃すことなく、よりジューシーな唐揚げに仕上がる。美味得徳調味油やエンハンスオイルなどのコク味成分を有する調味油と組み合わせ、唐揚げのおいしさ向上による売上アップにつなげるだけでなく、フライ油の劣化抑制により作業性を改善し、おいしさと低負荷を両立した提案が支持されている。

ハイトラストによりジューシーに仕上がったからあげのイメージ画像.jpg

アプリケーションを拡充

従来の使い方にとどまらない、アプリケーションも広がっている。水と油を保持できる独自のスターチ「ネオトラスト®」は、ハンバーグなど畜肉製品のジューシー感を高める用途で使われることが多かったが、最近では新たな用途として、製菓製パン分野でサクサク感や口どけの良い食感を演出するアプリケーションが注目されている。
「ネオトラスト®は技術改良により、吸水吸油してもダマにならず、細かい粒状を保持できる。この特性を利用して、サクサク・ほろほろ食感の焼き菓子や、口どけのよいパンができる」という。
東京・八丁堀の複合型プレゼンテーション施設「おいしさデザイン工房®」には、プロのシェフやパティシェが在籍し、日々新たな使い方の提案やアプリケーション開発を推進している。おいしさや食感を科学的に分析・評価する最新の機器も完備。製造方法や実際の生産工程への落とし込みも含め、お客さまと目線を合わせて新たな価値を創造する取り組みが広がっている。

ネオトラストによりジューシーに仕上がったハンバーグのイメージ画像
ネオトラストによりくちどけよく仕上がったパンの画像

食品ロス削減にも貢献

テクスチャー事業の提供価値は、おいしさの創造だけではない。そのひとつが、消費期限延長による食品ロスの削減だ。テクスチャー技術で中食惣菜や加工食品のおいしさを保持することで、廃棄を減らし、食品ロス削減につながる。
また、今後ますます人手不足が深刻化する中で、製造工場や調理現場の作業性改善に貢献し、働く人の負荷を低減できる。
テクスチャーデザインマーケティング部の松本氏は「当社は『おいしさ×健康×低負荷で、人と社会と環境に貢献するJoy for Life®〜食で未来によろこびを』〜を企業ビジョンに掲げており、テクスチャー事業が貢献できることはたくさんあります。おいしさはもちろん、サステナブルな社会に貢献する技術開発をさらに進めていきたい」と強調する。

テクスチャー素材の可能性を拡げる

価値共創のイノベーション

コロナ禍を経て、消費者の嗜好や食のトレンドは目まぐるしく変化し、商品サイクルは年々短くなっているが、松本氏は「おいしさや食感を付与するテクスチャー素材が活躍する場面は広がっており、新たな提案にトライしていきたい」と語る。
どうしたらこの食感を再現できるか、おいしさを維持・向上するためには…。新たなおいしさ・食感に目を向けるだけでなく、「テクスチャー素材の進化につながる基礎研究からのアプローチも重要です」と強調する。
基礎研究を担う研究開発センター・イノベーション開発グループの橋本氏は「直接お客様と接する機会は少ないですが、松本さんや加藤さんをはじめとする社内のメンバーと連携して、お客様の課題解決につながる素材開発や加工技術の研究、テクスチャー評価技術の研究などに日々取り組んでいます」と自らの役割を語る。 そのうえで、テクスチャー事業の未来について橋本氏は「当社ではサステナブルな航空燃料(SAF)、家庭用では紙パック容器のスマートグリーンパックなど、新たな分野に積極的にチャレンジしています。テクスチャー事業においても、社会課題の解決に資する新たなビジネスを創造していきたい。素材・加工技術開発以外にも、例えば食品のテクスチャーを分析する新たな評価技術開発なども取り組んでいる」。
「顕在化したニーズに応えるのはもちろんですが、誰も気づいていないが解決できると役に立つ潜在的なニーズを掘り起こし、その課題をクリアするための新たなイノベーションを実現していきたい。差別化を実現するために、大学や企業との外部連携も進めている」と夢を語る。

食の課題を解決する

テクスデザインラボのロゴ画像

松本氏は「J-オイルミルズは油の会社というイメージが強いですが、テクスチャー素材など多様な製品・素材を取り扱っていることを、より多くのお客さまに伝えていきたい」と語る。
その一環として、昨年から専用のホームページ「テクスデザインラボ® を開設。テクスチャー製品やレシピの紹介、水産・畜肉・製菓製パン・中食惣菜など主要カテゴリーのユーザーが抱える課題に対するソリューションの一例を掲載し、新たな顧客開拓を目指している。
油脂とテクスチャーを組み合わせ、おいしさと健康、そして社会と環境の負荷低減に貢献するJ-オイルミルズの挑戦は続く。

2024年1月26日 食品新聞社 岩下直樹