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TCFD提言への対応

概要

当社は、2020年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画しています。サステナビリティ委員会内に社内横断的なTCFD分科会を設置し、TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示を進めています。

ガバナンス

TCFDに関するガバナンスの内容については、「サステナビリティ推進体制」ぺージをご参照ください。

役員報酬とESG指標の連動

当社は2022年度より、役員の個人別業績目標へESG指標を組み入れました。組み入れるESG指標の一つにCO2排出量削減などの気候変動対応を設定しています。役員報酬とESG指標を連動させたインセンティブの導入により、役員の気候変動対策への取り組み意識を強め、ESG経営を推進いたします。

戦略

前提条件

当社グループは、気候変動を事業の継続性を鑑みても非常に重要な経営リスクとしてとらえており、2℃未満および4℃シナリオ※についてリスクと機会の分析を行っています。また、気候変動のみならず、温暖化が進むことにより、台風被害の甚大化などもリスク要因としてとらえています。

※2℃未満および4℃シナリオとは、地球温暖化の対応策に関する科学的な根拠を与え、国際交渉に影響力があるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告で、産業革命前から21世紀末までに、どれくらい平均気温が上昇するかについて予測提示されているものです。最も気温上昇の低いシナリオ(SSP1-1.9シナリオ)で、おおよそ1.4℃前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(SSP5-8.5シナリオ)で4.4℃前後の上昇が予測されています。

●2℃未満シナリオ
厳しい環境規制・高い炭素税が導入され、2050年に世界はカーボンニュートラルを達成。農業部門ではCO2ゼロエミッション化を実現する一方で、バイオ燃料の需要拡大・環境規制により調達コストが増加。消費者の環境意識が高まり、プラントベースフードの需要が拡大する。
日本の気温は20世紀末との比較で約1.4℃上昇。日本の自然災害(台風や洪水)の発生頻度・強度は増加するものの4℃シナリオの想定まで悪化することはない。

●4℃シナリオ
低炭素化は進展するものの、2050年カーボンニュートラルは達成せず。自然災害は激甚化・頻発化し、サプライヤー・自社の生産拠点で浸水被害発生頻度が上昇。気温上昇による農作物の収量低下、品質悪化が顕在化。
日本の気温は20世紀末との比較で2050年頃までに約2.3℃上昇。また、台風の発生頻度が上昇すると共に強度が上がる。洪水発生頻度は、20世紀末との比較で約2~4倍になる。

対象期間 現在~2050
対象範囲 J-オイルミルズグループの全事業
気候変動によるリスク
影響度:
大:業績への影響が大きくなりうるもの(100億円以上)
中:業績への影響が大きくなりうるもの(10億円以上100億円未満)
小:業績への影響が小さいもの(10億円未満)
緊急度:
高:1年以内 中:5年以内 低:5年超

シナリオ:2℃/1.5℃ 項目:移行リスク


主なリスク リスクの説明 影響度

既存の取組み 対応の方向性(目標)

政策

  • CO2排出規制強化に伴う業績の悪化
  • CO2排出規制の強化により、排出権取引費用および炭素税負担が増加するリスク(CO2削減を達成できなかった場合)
25億円
/年(※1)
  • エネルギー使用量の削減(工程最適化、省エネ、高効率設備導入等)・再生可能エネルギーの活用(バイオマス燃料の利用等)
  • CO2排出量削減目標:2030年度50%削減(2013年度対比)、2050年カーボンニュートラル達成(Scope1,2)
  • 上記目標の達成に向け、1)CO2削減の為の設備投資を中期的に拡大、対応費用:累計46億円(~2030年、※2) 2)インターナルカーボンプライシング(ICP)を2023年4月より導入し、CO2削減投資の意思決定に活用 3)更なる省エネと省エネ設備への切り替え、再生可能エネルギーの積極的な利用
  • 気候変動対策の進展・エネルギーミックスの変化に伴う電気代、燃料価格の上昇による支出の増加
  • 再生可能エネルギーに対応する設備投資等の生産関連コストおよび物流関連コスト等が増加するリスク

市場

  • サステナビリティ重視に変化する消費者ニーズへの対応不足
  • サステナビリティ重視の消費者ニーズ(フードロス削減、プラスチック使用量の削減、資源循環等)への対応や製品需要対応の遅れによる売上減少
  • 長持ち油、PBF(※3)等の低負荷製品の開発・販売
  • 「容器包装に関する指針」に基づき、紙パック容器の採用等によるプラスチック削減、植物性プラスチック採用等バイオマス材利用の取り組み強化
  • 環境に配慮した原料調達、原料のトレーサビリティ向上
  • Scope3での削減は、排出量が多いカテゴリ1および4について削減方法の検討開始、削減に向けた以下の取り組みを実施
  • 更なる長持ち油等環境負荷を低減する製品、サービスの開発継続
  • プラスチック廃棄削減目標:2030年度までにプラスチック廃棄ゼロ化
  • 再生可能資源である紙やバイオマス材等の利用促進
  • 対応費用:7億円/年(バイオマス材等切替費用)
  • 大豆やパーム油の認証制度の活用と自社ルートでのサステナブル調達の推進

評判

  • 環境対応不足による評判低下
  • 気候変動対策の情報開示が不十分なことによる、企業価値や株価の低下、融資停滞、資金調達困難となるリスク
  • 省資源・省エネルギー、CO2排出量の低減、脱プラスチック、水資源の有効活用等の目標設定および適切な進捗管理と開示
  • 持続可能な原料調達、バリューチェーンでのAI 活用等による環境負荷の極小化
  • 各種取り組みの更なる推進と情報開示

シナリオ:4℃ 項目:物理リスク


主なリスク リスクの説明 影響度

既存の取組み 対応の方向性(目標)

急性

  • 自然災害増加による操業停止、物流網の寸断
  • 自然災害(海水面上昇に伴う高潮、台風、洪水被害等)増加により自社工場が操業停止になることによる損害
4億円
/年(※4)
  • 生産拠点の台風・高潮対策の実施・水害リスクを国交省のハザードマップ、およびWRIのAqueduct(※4)を使用し国内工場の再評価を実施
  • リスクが高い拠点は各所建屋に防潮板を設置、高潮で想定される水位を算出し高潮対策用の設備更新等の対策を実施
  • 主要生産拠点の水害リスク評価を定期的に実施・その他、レジリエンス強化に向けたBCP対策
  • 自然災害(海水面上昇に伴う高潮、台風、洪水被害等)増加によりサプライヤーが操業停止になることによる売上減少
  • 物流網の寸断により自社工場が操業停止になることによる売上減少
  • 倉庫が被災し、欠品が発生することによる売上減少
  • 自然災害による工場資産の破損、流出による復旧コスト増加
  • BCP(※5)の対応
  • 当社グループでのリスクマネジメントプロセスの中で、サプライチェーン全体のBCPを策定
  • 原材料供給の遅延や停止等に備えた適正在庫の確保と管理、重要原材料の複数購買等の施策を推進
  • 物流網停止時は物流会社/物流部門/営業部門で連携し対応方針を決定

慢性

  • 気温上昇や異常気象による収穫量減少や品質変化等による原料の安定確保困難
  • 主要原料(※6)の耕地面積の減少による調達コスト増加
  • 主要原料の収穫量減少や原料品質の低下への対応コスト増加
  • 穀物相場上昇等による調達コスト増加
  • 主要原料原産地の継続的な視察
  • 製品規格最適化
  • 新規品種、新規サプライヤーおよびサプライチェーンの検討
  • 原産地の多角化、高温耐性等の気候変動に対応した種苗の導入
  • 気象変動が原料品質に与える影響調査等を実施
  • 想定される原料品質を考慮した搾油技術の開発

※1 IEA:International Energy Agency (国際エネルギー機関)のNZEシナリオ(Net Zero Emission by 2050 scenario)における先進国の排出権取引価格の予測(2030年):140US$/tに2023年度排出量を乗じて算出。2023年3月期は130US$/tに2021年度排出量を乗じて算出。排出権取引価格の上昇および為替変動の影響を受けたものの、排出量が2021年度から2023年度にかけて減少したためリスク金額はやや減少。
※2 世界的に続く資材価格および設備工事価格の高騰に伴い、2023年3月期の対応費用から見直し
※3 PBF:プラントベースフード
※4 WRI: World Resources Institute (世界資源研究所)が公開している世界の水リスク評価ツールであるAqueductによるリスク評価に基づき損害金額を算出し、年間あたりの損害金額に置換
※5 BCP(Business Continuity Planning):事業継続計画
※6 主要原料:大豆、菜種


気候変動による機会

シナリオ:2℃/1.5℃


主な機会 機会の説明



既存の取組み 対応の方向性(目標)

資源効率

  • 生産・物流関連のコスト低減
  • 省エネ設備への更新や生産工程・拠点最適化による設備稼働コストの低減
  • モーダルシフトや新技術等効率配送による物流費の削減
  • 搾油機能の最適化に向けた検討開始・モーダルシフト等の推進(「エコシップマーク」認定取得)や長距離「スルー配送」見直し
  • 国内搾油機能の長期的な安定化に向けた拠点最適化
  • 配送規格統一に向けた検討や最適航路によるCO2排出・コスト削減
  • 再エネ設備の導入
  • バイオマス燃料への切り替え推進と燃料調達先の確保

エネルギー源

  • 再生可能エネルギーの導入によるCO2削減およびコスト削減
  • 再生可能エネルギー(太陽光パネル、バイオマスボイラー)の導入推進による排出権取引費用および炭素税負担の削減
  • 生産拠点でのオンサイト発電導入
  • 生産拠点での省エネ設備導入

市場

  • 環境意識・エシカル消費の高まり(食料危機への対応)
  • 低炭素商品・サービス・ソリューションの売上拡大
  • 環境意識の高まり、エシカル消費の増加、たんぱく質危機等によるPBF製品の需要増加による売上拡大
  • 長持ち油の開発
  • PBF製品の販売
  • 更なる長持ち油や紙パック容器製品等環境負荷を低減する製品、サービスの開発継続
  • PBF製品によりたんぱく質危機や食の安定供給に貢献
  • テクスチャー素材による、経時劣化の抑制、食感維持によるフードロス削減

レジリエンス

  • 社会からのサステナビリティ要求を満たす最適な事業ポートフォリオの実現による信頼獲得
  • 省エネ、再生可能エネルギー活用推進によりサステナビリティに適合する最適な事業ポートフォリオの構築実現に伴い、社会からの信頼獲得による売上拡大・株価向上
  • 第六期中期経営計画にて事業ポートフォリオを変革し、環境負荷低減、社会課題解決型の製品・サービスを拡大
  • 社会課題の解決につながる製品の更なる拡大
  • バイオ原料確保によるSAF(※7)製造等のバイオマス事業構築に関する検討
  • 非可食油原料樹の植林によるCO2の固定化、植林を起点としたSAFサプライチェーン構築等の検討
  • サステナビリティ情報の開示拡充
  • BCP対策強化
  • 気候変動による自然災害の激甚化等に備えた安定供給体制の確保による、食品の安定供給を通じた社会貢献、企業価値の向上
  • BCPの対応
  • 当社グループでのリスクマネジメントプロセスの中で、サプライチェーン全体のBCPを策定
  • 原材料供給の遅延や停止等に備えた適正在庫の確保と管理、重要原材料の複数購買等の施策を推進
  • 主要生産拠点の水害リスク評価を定期的に実施
  • その他、レジリエンス強化に向けたBCP対策

※7 SAF: Sustainable Aviation Fuel (持続可能な航空燃料)

また、当社は2021年にマテリアリティの見直しを行い、「気候変動の緩和と適応」を優先課題の一つとして特定しました。2023年には再度マテリアリティの見直しを実施しました。
マテリアリティ特定のプロセス・相対的重要性の判断については、以下をご参照ください。

リスク管理

サステナビリティ全般に関するリスク管理の内容については、「リスクマネジメント」ぺージをご参照ください。

指標と目標

2030年度までにCO2排出量を2013年度対比で50%削減(Scope1、2)、2050年度までに排出ゼロにするカーボンニュートラルを掲げています。また、購入する原材料や商品の製造に関するCO2排出量など、サプライヤーと連携し、サプライチェーン全体(Scope3)での削減も目指します。Scope3については、排出量の多いカテゴリ1やカテゴリ4について算定精度の向上を図り、削減方法を検討していきます。
2023年4月よりインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。CO2排出量削減投資および投資意思決定の促進を図っていきます。

CO2排出量削減実績と中長期目標のグラフ図

主な取り組み内容

  • エネルギー使用量の削減(工程最適化、省エネ、高効率設備導入等)
  • 再生可能エネルギーの活用(バイオマス燃料の利用等)