滝沢秀一さん
1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成し、爆笑レッドカーペットやエンタの神様に出演。2012年、2014年「THE MANZAI」認定漫才師となり、お笑い芸人として活動しつつゴミ清掃員としても働く。自らの体験から発信するゴミ問題の現状をSNSでつぶやいたことから話題に。『このゴミは収集できません』(角川文庫)、『ゴミ清掃員の日常』(講談社)など、ゴミ関連の著書は累計15万部を突破。2020年には環境省のサステナビリティ広報大使にも任命され、ゴミに対する人々の意識を変えようと日々活動中。
“ゴミ清掃芸人”マシンガンズ滝沢秀一さんがJ-オイルミルズにやってきた!【後編】
“ゴミ清掃芸人”マシンガンズ滝沢秀一さんが
J-オイルミルズにやってきた!【後編】
「つくる責任、つかう責任」
※ゴミの分別や回収ルールは自治体によって異なります。ゴミは地域のルールに従って出しましょう。
「たためる軽量容器」など、J-オイルミルズの取り組み
J-オイルミルズは、ゴミを減らし、コンパクトにする取り組みを長年続けている。その一例を、J-オイルミルズ 経営推進部 経営推進グループ長で包装管理士でもある日高和弘が、滝沢さんに紹介した。
J-オイルミルズでは、商品のユーザビリティや使い勝手を良くするだけでなく、ゴミ削減にもつながる軽量プラ容器、『エコボトル』開発に力を注いできました。さらに、プラスチック使用量を通常のプラボトルより6割以上削減(※同容量帯容器との比較(当社計算))、『スマートグリーンパック®』も導入して好評を博しています。
これらの容器には、ゴミを削減するためのさまざまな細かい工夫をプラス。容器に折り目や筋を入れたことで、簡単に、薄く小さく、つぶしたりたたんだりできます。また、これらはつぶした後にキャップを閉めると、元のふくらみには戻らないようになっているんですよ。
ただ、『スマートグリーンパック®』は、プラスチックなどが含まれた独自の5層構造を採用していることと、食用油容器のために、現状では牛乳パックやお酒のパックのようなリサイクルができません。そこで、将来的にリサイクルを実現すべく、素材やシステム開発にも積極的に取り組んでいます。
「食用油を捨てない、流さない!」環境を守り、SDGsを実現
――使用済み油(廃食用油)はどう捨てたらいい?
現状では多くの自治体で、家庭から出る使用済みの食用油の資源回収は実現できていません。油凝固剤などで固めてから、しっかりと密封して可燃ゴミの日に出してください。凝固剤の代わりに新聞紙などに吸い取らせてもいいですが、吸い取らせ方が不十分だと油がこぼれてしまうので注意が必要です。
油を吸い取らせずそのまま袋に入れて捨てたり、賞味期限が切れてしまった油をボトルのまま捨てる人もいるのですが、それは絶対にやめてほしいですね。
油がしみ込んだ紙・布、揚げかすなどは、高温や光にさらされると油が酸化して熱をもち、自然発火する恐れがあります。特に夏場のベランダや日当たりのいいキッチンの窓辺などは危険です。使用済みの食用油をゴミ収集の日まで保管しておく際には、必ず空気に触れないように密封して冷暗所で保管してください。
――正しい処理やリサイクルは、自然環境を守るためにも大切?
川の清掃ボランティアに参加したことがあるんですが、ペットボトルやプラスチックなど目に見えるゴミは意識しやすいけれど、油は目に見えないので汚染がわかりにくい。“これくらいならいいだろう”と排水管に流したり、捨てたりしがちだと感じました。それがちょっとずつでも繰り返されれば、川や海が汚れてしまいます。お皿を洗うときは、まず油をふき取ってから洗うことも心がけたい行動ですね。
油が河川や海に流れ込んで冷えて固まったものは、オイルボールや廃油ボールと呼ばれて環境汚染の一つとして知られています。私は島育ちで、船のエンジンオイルや重油などが海岸に打ち寄せられて黒いボール状になったものをよく見ました。近年、人口の多い東京湾沿岸などでは、廃食用油による白っぽいオイルボールも見受けられるそうですよ。
ゴミ処理能力は限界に。工夫次第で「ゴミは減らせる!」
――未来のために、今すぐ私たちがはじめるべきこととは?
J-オイルミルズでは、油の製造過程で出るミール(搾りかす)を飼料や肥料として活用し、大豆や菜種などの原料を余すことなく使っています。さらに、工場・事業所から発生する産業廃棄物を単純焼却・埋め立て処分しないなど、廃棄物をゼロ化する“ゼロエミッション”にも力を注いでいます。
また、賞味期限切れで廃棄される食用油のロスを減らすため、通常の油より約3割長く使える業務用油『長徳®(ちょうとく)』シリーズを開発し、お客さまからご好評をいただいています。先ほどお話ししたように、紙パックのリサイクルや容器の一層の軽量化、使用済み食用油のリサイクルなどにも、関連する企業や行政との連携も図りながら取り組んでいます。
ゴミ処分場の処理能力は自治体によって差がありますが、平均してあと23.4年、つまり2048年には日本のゴミを埋め立てる場所は足りなくなり、ゴミ処理はパンクするといわれています。また、最近は自然災害が頻発し、災害ゴミの処理も大きな課題になっています。
10年前にゴミ清掃員になってゴミを減らすことを意識してから、我が家のゴミは週に6袋から1袋に減りました。不要なものは買わない、使えるものは最後まで使ってリデュース・リユース・リサイクルする、生ゴミはコンポスト(生ゴミや枯葉を微生物等の発酵分解で堆肥にする容器)を利用するなど、個人でもやれることはたくさんあります。一人ひとりの小さな努力の積み重ねと、企業や自治体などが力を合わせたシステムづくりの両輪で、ゴミの課題を解決していきたいですね。
※掲載している内容は2024年9月時点のものです。
取材・文/岸 美雪 取材日2024年9月5日