おいしいオリーブオイルのためにーJ-オイルミルズの理化学分析チームの取り組みに迫る
おいしいオリーブオイルのために
ーJ-オイルミルズの理化学分析チームの
取り組みに迫る
JOYLブランドのオリーブオイルのおいしさと品質を守り続けるため、日々理化学分析技術の研鑽に取り組むJ-オイルミルズ。その秘密に迫ります。
おいしいオリーブオイルを食卓に届けるため、オリーブオイルの「鮮度」にこだわり続けるJ-オイルミルズ。オリーブオイルの鮮度やおいしさを計るための重要な技術とされているのが風味評価と理化学分析だ。J-オイルミルズのオリーブオイル理化学分析チームは定期的な訓練やモニタリングを受けており、日々、分析能力に磨きをかける。2018年には日本企業で初めて、オリーブ業界における世界で唯一の政府間組織である国際オリーブ協会(International Olive Council、以下 IOC)が設ける国際的な品質分析基準「オリーブオイル理化学type A認証」を取得。2020年まで継続認証を受け、2021年には日本の油脂企業で初めてtype A認証を包括する上位認証であるtype B認証を取得し、今年で3年連続の合格実績を積んでいる。それでもなお、JOYLブランドのオリーブオイルの品質を守り続けるため、理化学分析技術の研鑽を深めている。
国際水準の分析技術を担保
IOCが主催するオリーブオイル理化学認証は、IOCが定める技能評価基準を満たした機関・団体にのみ毎年与えられるもので、世界レベルのオリーブオイルの理化学分析を実施する能力があることの証明となる。Type A:基本的な分析5項目、TypeB:品質パラメータを含む純粋性の分析(TypeA+14項目)、Type C:汚染物質(重金属、残留農薬等)の3種の分析に分かれており、TypeBを受けるにはISO/IEC 17025認証の取得を必要とする。Type Cは、金属類、残留農薬、多環芳香族炭化水素類、MCPDEなど有害成分の検査となることから、分析機関の受託事業の関係で取得するパターンが多い。参加ラボ総数は159。国内の油脂メーカーとしては、TypeBの認証は同社が初めて取得した。過去にメーカーとしての認証実績がないなか、どのような背景で認証取得に至ったのだろうか。
そのきっかけは2016年、ヨーロッパで開催された油脂関係の学会に参加した際だったという。同社では、風味評価に関しては社内でパネルチームを立ち上げ、風味評価技術のブラッシュアップを図ってきた一方、理化学分析についてはさらなる技量向上にむけた取り組みを強化していくこととなっていた。学会である著名な先生に相談をしたところ、このIOCの理化学認証を勧められたところからはじまり、2018年12月にtype A認証を初取得。2019年、2020年も継続して認証を受けるなか、TypeBの認証も見据え、2019年に西村氏はイタリアの分析機関で品質分析トレーニングを受けた。そこで世界レベルの技術力を身につけた西村氏を中心に試験に挑み、2021年に初めて受験したtype B認証試験ではエラースコア0の最高成績を収め認証に至った。
高度な分析技術を伝承
試験では、IOCから送られてきたサンプル3種に対し指定された分析を実施し、得られた結果を提出する。サンプルには、精製ポマスオイルやエステル類、菜種油、動物性脂肪、ひまわり油など様々な混ぜ物が入れられていることが多いが、100%オリーブオイルが届く時もあったりと毎年中身が変わる。採点方法は、平均値の標準偏差をzスコアとし、その標準偏差が一つ分ズレているとエラースコア1、二つ分ズレているとエラースコア2…というようにズレが大きくなるほどエラースコア値も大きくなる。分析項目ごとのエラースコアを算出して合算し、どれだけエラースコアの値を抑えられているかが重要となる。合格基準は、参加全ラボのエラースコア平均から1.5倍以内とされており、年によってこの平均値は変動する。試験が終わった後にはサンプルの組成が公開されている。
TypeAの分析項目は、酸価や夾雑物など日常的に測定をしているような基礎的な5項目に対して、TypeBでは項目数が大幅に増える。大きくまとめると19項目だが、例えばステロールは16種類、脂肪酸は15種類がまとめられている。加茂氏は「それぞれの分析が必要でスコアも個別に算出されることから、TypeAからTypeBではハードルが大幅に上がります。我々も、初年度はエラースコア0で認証を取ることができてうれしかったですが、原因は様々ですが多少ずれてしまうことは避けられません。より精度を高めていくためにも、分析技術を磨いています。」と難しさを語る。近年は、西村氏がイタリアで学んだノウハウの伝承なども含め分析要員増員に向けたトレーニングを実施しており、全ての項目で複数人分析できる体制を構築している。
日本のEVオリーブオイルの品質、国際基準に準拠へ
一方、エキストラバージンオリーブオイル(以下、EVオリーブオイル)の品質規格に関して、日本ではJASで定められた物性値を基準としており、官能検査と理化学検査で評価する国際規格と乖離があるとして国際整合性がかねてより課題視されてきた。昨年3月に公正取引委員会および消費者庁の認定を受けて「エキストラバージンオリーブオイルの表示に関する公正競争規約」が告示され、EVオリーブオイルの表示に関する公正競争規約の管理と、国際規格と整合のとれたオリーブオイルの普及啓蒙を推進する目的で今年3月末、日本オリーブオイル公正取引協議会が設立された。この公正競争規約のエクストラバージンオリーブオイルの定義や品質規格はIOCの品質規格に準拠しており、理化学検査および官能検査の規格・基準を満たした製品は、一括表示内にEVオリーブオイルのグレード表記が可能になる。同社ではIOCの理化学認証試験を通して身につけた技術を反映できる体制が整っていることから、スピード感をもった対応が可能となる。
会社全体の分析技術向上に寄与
毎年試験のサンプルが届き分析結果が得られるのが6月ごろで、8月までには採点結果が判明する。今年もすでにサンプル分析を終えているという。今年度の振り返りとともに次に向けた改善策などをチームでミーティングを進め、TypeBを受験するために必要な資格であるISO17025の認証維持や精度管理なども徹底している。加茂氏は「身につけたこの分析技術を自社の技術知見として蓄積するとともに、オリーブオイルに限らず他のグループでも応用していくことで自社全体の分析技術向上につなげていきたい。」と語った。