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マネジメント座談会

座談会風景

ー強みと成長に向けた取り組みー

「J-オイルミルズグループの強み」をテーマとして、それぞれの担当領域や経験から意見を交わしました。当社成長の原動力となる「強み」を、さらに強化していくための課題や今後の取り組みについても議論し、今後の大きな方向性について示しました。

「おいしさデザイン®」で貢献するソリューション力

当社グループの強みを一言で表すと、「おいしさデザイン®」に尽きます。当社は企業理念体系で「おいしさデザイン®で『食べる』と『つくる』の課題と向き合い、より良い社会に貢献する」ことを使命として掲げています。使命の実現には、お客さまの声に対して真摯に向き合い、課題を解決していく「ソリューション力」が不可欠です。「ソリューション力」が当社の成長に向けた原動力であり、それを可能にするための三つの基盤があります。一つ目は、合併前から三社がそれぞれに培ってきたお客さまとの接点や知見、ノウハウです。二つ目は、おいしさを「味・香り・食感」の要素に分解し、ニーズに沿ったおいしさを表現できる技術力です。三つ目は、液体油脂をはじめ、油脂加工品(マーガリン類)や粉末油脂、スターチ(でんぷん)など多岐にわたる性質の素材を製品として扱っていることです。

営業の視点でお話ししますと、私は合併前の各社の強みが今も活きていると思います。ホーネンコーポレーションは、業務用油脂の一般マーケット分野において東日本エリアの圧倒的なトップブランドでした。吉原製油は西日本エリアのトップブランドで、味の素製油は大手外食・中食や大手流通を得意としていました。つまり、業務用油脂の一般マーケットにおいて東西の双璧をなす二社と、大手外食・中食に強みを持つ会社の合併という歴史的な背景があります。業務用油脂のマーケットで評価されるためには、プロの厳しい視点で評価される高い品質の維持が求められます。油の加熱安定性、言い換えれば良い状態が長持ちする性能が必要です。このようなニーズに応えられる技術力があるからこそ、国内業務用油脂の市場で約4割※という高い存在感を示すことができています。さらに外食・中食のマーケットにおいては、油を単なる熱媒体として捉えるのではなく、油によってお客さまのメニューを最終的においしく仕上げることが求められます。当社がその視点を持っていることも、ご支持頂いているポイントだと自負しています。

※主要企業ベースの販売量(日刊経済通信社調べ2023年度)より当社推定

さまざまな技術を組み合わせておいしさを演出するという点で、当社は強みを持っています。お客さまのご要望をお聞きして再現する技術に、優位性があるからです。優良な素材を使用したソリューション提案によって成果を上げています。一方、今後も長期的に優位性を維持していくためには、新たな素材を常に生み出していく必要があります。訴求力のあるソリューション事業を継続していく上では、新素材の開発が持続可能な価値創造につながると考えています。そのためにも、おいしさのメカニズムを科学的に究明するチャレンジが大切です。

私が携わっていた石油業界でも、ガソリンスタンドを通して販売するBtoCと、航空会社や運送会社と大手需要家に直接販売するBtoBのビジネスを展開していますが、両者には大きな違いがあります。BtoCでは、お客さまがガソリンスタンドを選ぶ際に重視するポイントとして、ブランドよりも職場やご自宅からの距離や価格が大きく影響する一方、BtoBの場合は価格だけでなく、供給安定性や品質が大きく影響します。特に潤滑油など、ブランドにより性能に差のある製品は、自社の設備への適合性や長く使用できる品質が重視されます。また、この担当者に任せれば間違いないと思っていただける人財力も重要です。製油業界も同じで、製品の供給安定性、長持ちする性能などのクオリティー、最後に人財力です。旧三社の基盤を基に、BtoBにおける人財力、つまりお客さまからのリクエストに対して的確な提案ができることが、当社の強みだと思います。

集合写真
キッチンイメージ画像
2024年6月、社内外のステークホルダーとの接点として重要な拠点である「おいしさデザイン工房®」において、企業価値向上の実現に向けた取り組みや課題をテーマに、マネジメント陣による座談会を開催しました。

お客さまに効果的な提案ができるよう、営業体制の仕組みを整備しています。お客さまに対して油、スターチ、油脂加工品などの異なる素材を一緒にご提案できるよう、ソリューション事業部ではそれぞれの営業担当が全製品をカバーするワンストップ営業を行っています。また、川上の食品メーカーから川下の外食・中食企業までを同じチームが営業・サポートする体制にしています。外食・中食のお客さまの調理品をおいしく仕上げるためには、原材料から製品を製造する食品メーカーと当社の連携した提案が必須であり、おいしさは「お客さまと共に創っていく」ものです。BtoBtoCのビジネスを推進するための仕掛けがお客さまの価値創造に貢献し、当社が目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」の実現にもつながります。

取締役専務執行役員 COO 上垣内 猛

BtoBtoCのビジネスでは、家庭用油脂・業務用油脂という分類自体が古くなっています。例えば、家庭で揚げ物やサンドイッチなどを作る機会が減っているため、大手スーパーでは惣菜の売上比率が高まり、売り場面積も拡大しています。当社は食品メーカーや小売店と共に、生活者に求められる味を「おいしさ×健康×低負荷」を意識して作っています。自社施設「おいしさデザイン工房®」はキッチン・ベーカリー・オフィス機能を備えた複合型プレゼンテーション施設です。家庭用、外食、中食、加工用、製菓・製パンなど、ありとあらゆるお客さまを対象とし、試食やプレゼンテーション、また試作のデモンストレーションも含めたさまざまな活動を行っています。この施設では、お客さまと当社との間で、お互いのさまざまな知識や知見をシェアして、どのようにしたらより良い製品が提供できるのかという議論を行っています。インバウンド需要の増加といった川下の動きに合わせてBtoBの重要性も一段と高まっていますが、一方でBtoBtoCのビジネスを極めていくことも、これからの大事なポイントになると考えています。

先ほど、BtoBtoCにおける川上・川下というお話をしましたが、川上部分では海外拠点からのアプローチもあります。日系の食品メーカーでは海外、特にASEANに多くの生産拠点を構えており、畜肉加工品などはタイをはじめとする現地工場で加工しています。そのため、連結子会社のJ-OIL MIILLS (THAILAND) Co., Ltd.が顧客ニーズや技術の組み合わせなどを当社と連携・情報共有をした上で、食品メーカーの現地工場と商談を行って原料を決めるという形で、国内・国外で同時フォローする枠組みになっています。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、外食産業のニーズも変化しました。コロナ禍前までは、外食産業では調理した料理をお客さまにすぐに提供していましたが、テイクアウトやデリバリー需要が増えたことで、調理した料理が一定時間を経過した後、食される機会が増えました。結果として、中食産業だけでなく外食産業においても「経時劣化の抑制」という機能に注目が集まっています。これはまさに当社の独自技術を使用しているスターチ製品の食感コントロール技術が得意とする機能であり、フードロス削減という社会課題解決の一助にもなります。当社では一般的なスターチだけでなく、独自技術で高機能のスターチも製造・販売しており、経時劣化の抑制、ジューシーさの実現やコク味の向上、食感改良など、お客さまの課題解決につながる提案活動を行っています。当社には、これまで中食産業に数多くの提案をしてきた経験とノウハウの蓄積があり、このノウハウを外食産業にも活かせる環境になっています。外食産業のお客さまからも、当社への期待を感じています。

スターチと油を組み合わせてトータルで提案できることが、当社ならではの強みです。当社は油の会社として知られていますが、旧事業会社時代を含めると1950年代から食用のスターチも製造・販売してきました。通常のスターチだけでなく、長年培った独自の加工技術を活かして開発した高機能スターチなど多様な品ぞろえがあります。お客さまが油やスターチの最適な組み合わせを考えるのは難しい面がありますので、当社がトータルで組み合わせたソリューション提案をすることで、長持ちする油や経時劣化を抑制するスターチなどを幅広く採用いただけています。

業務用事業で当社が持つ競争優位性の一つは、油脂だけでなく機能性スターチを含めた豊富なソリューション提案の経験を持つことです。味、風味、食感の三つの要素をコントロールして、総合的なおいしさを追求するという考え方が当社の「おいしさデザイン®」です。

BtoBであれBtoBtoCであれ、お互いに顔の分かるメンバーで、生活者に向けて、おいしさを一緒に作ることが重要です。「おいしさデザイン工房®」は、お客さまの担当者と当社の担当者が顔を合わせながら「おいしさ」を創造するための場であり、そこで生み出したものは当社だけではなく、お客さまのものでもあるわけです。こうした取り組みが強みの一つだと思います。

「 おいしさデザイン®」という考えの下で、味や食感だけでなく、経時劣化抑制などの機能にもご満足いただける提案を今後も展開していきます。同時に、当社が目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」を実現するために、「おいしさ」と「健康」はもちろん、環境への「低負荷」、労働への「低負荷」などの要素をバランスさせた製品・サービスを引き続き提供することが、当社の重要な取り組みです。一方で、第六期中期経営計画達成に向けて販売数量の確保も重要です。新規顧客の獲得や既存チャネルでのシェア拡大などの計画を緻密に策定し、お客さま、地域、チャネルごとにきめ細かくモニタリングしています。BtoBtoCの規模が拡大しているため、進捗を把握する上で油脂とスターチをセットで定点観測してみると、スターチのおかげで外食・中食のビジネスにつながる実績が数多く見られました。今後は、より精緻にモニタリングしていきます。また、ビジネス拡大のために製品力の強化も進めていきたいと考えています。イノベーションは簡単ではありませんが、突き詰める必要があります。インフレになると、さらに高付加価値品の需要も出てくるでしょうから、近藤さんの研究開発チームと共に新製品を出せるように取り組んでいきます。

現在のラインアップだけで当社の優位性が未来永劫キープできるわけではないと考えていますので、先ほどお話ししたように先を見据えた新たな素材、特にスターチ類を開発することで、当社の強みを今後も保てるよう注力していきます。

「おいしさデザイン®」を創る 個とチームの人財力

亀岡さんにご指摘いただいたように、BtoB事業は製品力とともに人財力も重要です。

社外取締役(独立役員) 亀岡 剛

最終的には、お客さまに「誰が担当になっても大丈夫」と感じていただかないといけません。営業だけが担当者ではなく、技術担当もマネジメントもチームとして対応することで、誰かが異動になったとしてもカバーできる体制になっていることが大切です。また、創立20周年を迎えた当社の次のあるべき姿として、全ての従業員が自社製品のこと、お客さまのことを考えるような企業文化にしていくことが必要だと思います。例えば先日は、育児休暇を活用する男性従業員を対象に、料理を通じてパパ同士が交流する社内向けイベントを「おいしさデザイン工房®」で開催しました。全てのメーカーの油を使った上で当社製品はどうだったか、あるいはパッケージや味についてどう思ったかなど、自社製品への興味・知識が一層高まります。こういった取り組みを通じて、従業員全員が自社製品やお客さまについて考えるようになればと思います。

「おいしさデザイン工房®」でのプレゼンテーションには私も同席する機会が多々あります。基本的に営業担当が中心となり、お客さまへのご提案を行っています。従来はマネージャークラスが担うことが多かったのですが、現在は一般職の担当者が提案することも増えました。製品開発についても担当者が月に1回はプレゼンテーションをするなど、当社の人財ポリシーで掲げる「個の最大化」とその「強い個が融合するチーム」として対応ができるようになったと思います。お客さまには総力戦で臨むことがベストだと考え、実行しています。

亀岡さんにご指摘いただいた「選ばれる営業」になるためには、お客さまに対して相当刺さりこむ必要があり、営業部門として「個の力」が最大化されるよう、教育しています。加えて、BtoBのビジネスでは「おいしさデザイン工房®」に常駐している人財の力も非常に重要です。開発に携わる従業員には技術者だけでなく、元シェフで当社に中途入社されている方も多いことから、非常にクリエイティブな視点でのお客さまへのサポートが可能です。同じ製品でも、思いもよらないような使い方や組み合わせを提案し、独自の価値を創る「強みの掛け算」で、新たな効果を生み出す自由な発想ができるメンバーです。こういったクリエイティブな人財を今後いかに増やしていけるかが、チーム強化のポイントです。

研究開発の観点では、「おいしさデザイン工房®」で発見した新たな効果を科学的に検証できる人財の育成が大切だと考えています。要因を分析し、なぜそのような効果が得られたのかを科学的に検証することで、次のステージにつなげることが重要です。

「おいしさデザイン®」を支える 守りと攻めの知的財産

執行役員 研究開発担当 兼 研究開発センター長 近藤 一也

当社では、知的財産を事業活動における必要不可欠な取り組みと位置付け、研究開発部門の傘下に知的財産の専門部署を設けています。一般的に知的財産活動は、優位性のある技術を特許化し、他社から侵害されないように守る側面と、他社の特許技術を侵害しないようにする側面があります。当社の特許件数は、ここ数年で大きく増加しています。今後は、特許の数とともにクオリティーも高めていきたいと考えています。昨年から外部機関を使って、当社の特許のクオリティーを把握しています。数年単位のトレンドを見ることで、当社の特許の排他性や有効性が上がっているのか、下がっているのかをつかめます。

製品開発のプロセスでも特許は重要です。製品開発がある程度進んだ段階で、他社の特許を侵害しないように方針の変更を余儀なくされることもあります。従って、研究開発部門だけではなく、知的財産の専門家が製品開発の初期段階から協力することが重要です。

その通りだと思います。例えば、競合他社の知的財産をマッピングすると、他社がどの分野を狙っているのかが見えてきます。当社が研究開発する際には、特許ポートフォリオの中で、どういったものを開発していくのか検討します。その際、研究開発の初期段階から知的財産のメンバーと協働することで、どの分野の特許を取得することが当社の勝ち筋につながるのか把握できるようになります。他社が特許を取得している分野ではなかなか勝てないものの、隙間を早い段階で見極めて、この分野を狙っていこうという方向性が見えてきます。

知的財産のチームは毎月公表される特許情報を追いかけています。裏方的なポジションの印象があるかもしれませんが、今後は知的財産の知見が、事業戦略の方向性や施策にインパクトを与える重要な役割を担うと期待しており、製品開発会議や事業会議にも積極的に出席してもらうようにしています。知的財産と事業が連動していることは明らかなので、当社の企業価値向上を図る上で主役の一つだと考えています。

「おいしさデザイン®」に磨きをかける dX推進

当社が考えるdXにおいて大事なことは、単なる手段としてのデジタル化ではなく、本来の目的である業務におけるトランスフォーメーションを実現することにあります。そのコンセプトを明確に表現するため、「X」に重きを置き、「dX」として業務改革プロジェクトを進めています。将来的な人員不足に備えて業務プロセスを改善することは必須ですし、お客さまとの接点においてデジタル化を進める必要性も感じています。仕事の仕方や業態が変わっていくようなビジネスのトランスフォーメーションと、ファンクションのトランスフォーメーションの両方をどう考えていくのかという課題に対して、近藤さんがリーダーとなって取り組んでいます。

当社はこれまでdXについてさまざまな取り組みを進めていましたが、2024年4月にCEOの佐藤さんをプロジェクトオーナーとし、私がプロジェクトリーダーである「dX推進プロジェクト」を正式に立ち上げました。業務変革、連携変革を第一のステップとして取り組みを開始しています。次のステップとして、これらを通じて新規ビジネス構築を図り、ビジネス変革につなげていきます。最終的には社会価値を生み出し、社会変革につなげ、当社のビジョン、ミッションの達成まで到達したいと思っています。現段階では、まずは将来のdXを見据えた業務の効率化を展開していきたいと考えています。

おいしさをデザインする際、最終的には人間の口で味や食感を確認するわけですが、そこに至るまでのプロセスにAIを導入することで、これまでにない画期的なアイデアが生まれる可能性があると思っています。その観点から、単に業務の効率化を志向したdXではなく、AIも活用しながらこれまでのやり方を変えられるかどうかがターニングポイントになると考えます。

長期的な視点では、その通りだと思います。あるべき姿や目指すべき姿の設定は、取り組みの方向性を決めて進めていくために必要だと考えていますので、議論を重ねています。

常務執行役員営業総括 富澤 亮

営業の観点では、お客さまとの接点をいかに増やしていけるかがポイントになると思います。例えば、当社が運営する「TXdeSIGN®Lab.(テクスデザインラボ)」という業務用スターチ製品のWEBサイトでは、機能性スターチをお客さまにご理解いただき、使いこなしていただくための情報を提供しています。食品メーカーや大手外食・中食の開発担当者の方々に多くアクセスいただいていますが、そのチャンスを活かしきれていないという課題がありますので、dXを進めることで、これまで以上にお客さまとの接点ができる営業活動につながることを期待しています。

当社は、「おいしさデザイン®」で「食べる」と「つくる」の課題と向き合い、より良い社会に貢献するためのソリューション力に磨きをかけるとともに、知的財産の活用やdXの推進を通じて、さらに存在感のある会社を目指します。これからの当社の取り組みにぜひご注目ください。

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