CEOメッセージ

構造改革により「復活」を果たしました。
次は「成長」に向け、多面的なチャレンジに取り組みます。
はじめに
2024年は当社グループが20周年を迎える節目の年です。前身の事業会社はいずれも日本の製油業界をリードし、高いマーケットシェアを誇っていました。製油業界を取り巻く事業環境や国際情勢、お客さまのニーズは当時とは異なりますが、かつて業界をリードしていた自負を思い起こし、現状に満足せずに取り組むことが当社の持続的成長に欠かせないと考えます。私たち役員がリーダーシップを発揮し、従業員が一丸となって挑戦し続けることが、今こそ当社にとって必要なことです。
2023年度の振り返りと構造改革の進展

2023年度は大幅な増益を達成し、営業利益が72億円、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高の68億円となりました。私は期初目標に「復活と成長」を掲げていましたので、まずは「復活」をうれしく感じています。私が社長を拝命した2022年度は、非常に厳しい事業環境でした。原料相場の上昇分を速やかに製品価格に転嫁できず、2022年度の営業利益はわずか7億円でした。まずは国内収益の立て直しが急務と考え、さまざまな手を打ってきた中で、2023年度の業績回復の大きな要因は構造改革の進展であると分析しています。
構造改革の一環として、不採算事業の整理を進めました。まずマーガリンですが、1966年より販売してきた「ラーマ®」などの家庭用マーガリンの終了を決断しました。製造設備の老朽化と市場動向を鑑み、事業としての将来性を慎重かつ合理的に判断した結果です。業務用マーガリンでは国内生産を大幅に縮小し、コスト競争力のあるマレーシアに生産を移管することで収益性を高めてきました。SKUを削減し、価格も改定したことでマーガリンの採算は改善し、赤字体質から脱却して利益を生むようになりました。
2023年度の業績について自己評価をすると、私は満足するレベルには全く至っていないと考えています。親会社株主に帰属する当期純利益と1株当たり配当金額は過去最高でしたが、営業利益は2020年度以前の水準に戻ったに過ぎません。構造改革は進展した一方、成長戦略が見えにくいとのご指摘を頂くこともあります。大きく飛躍するための準備運動で、当社は一度大きくかがみました。これからはいよいよ飛躍の時です。より一層のスピード感をもって、さまざまな施策を推進してまいりますので、ご期待ください。
成長戦略としての海外事業
当社は成長戦略の一つとして、2026年度の営業利益に占める海外比率の目標を7%と掲げ、国内油脂事業に過度に依存したリスクの高い収益構造から脱却し、安定的な事業ポートフォリオへの転換を目指しています。
ターゲットとする地域はASEANと北米です。現在、ASEANでは業務用マーガリンとスターチが主力となっています。マレーシアの連結子会社Premium Fats Sdn Bhd(以下PF)および持分法適用会社Premium Vegetable Oils Sdn Bhdは、マーガリンやショートニングなどの油脂加工品を製造しています。PFはASEANを中心とした販売を行っていますが、日本向け油脂加工品の製造も行っています。スターチはタイの関連会社Siam Starch(1966)Co., Ltd.で製造されたものを、当社連結子会社のJ-OIL MIILLS(THAILAND) Co., Ltd.が販売しています。日系企業をはじめ現地企業への販売や輸出で、業績は好調に推移しています。北米では巻きずしなどに使用する海苔の代替品として、大豆シート食品「まめのりさん®」を日本食レストラン中心に販売しています。「まめのりさん®」も現在の販売チャネルだけではなく、新たな用途開拓や販売エリアの拡大を行うことで事業規模をスケールアップさせていきます。
現在は限定された製品を展開していますが、海外事業を成長させるためには、ラインアップの拡充や事業規模の拡大にスピードを上げて取り組む必要があります。販売拠点やエリアの拡大などを全て自前で構築するには莫大なコストと時間がかかりますので、スピードを上げて海外事業を当社の収益の柱とするために、あらゆる経営リソースを活用していきます。
当社の強み
当社は目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」を達成するために、「おいしさ×健康×低負荷」を掲げています。食品メーカーとして「おいしさ」と「健康」はもちろん、「低負荷」を具現化した製品を順調に生み出し、高い評価を得ています。2021年8月の発売以来、ラインアップを拡大している「スマートグリーンパック®」シリーズは、他社に先駆けてパッケージに紙パックを採用し、プラスチック使用量とCO2排出量を削減した、環境配慮型の家庭用食用油シリーズです。2023年8月に発売したJOYL「AJINOMOTO ダブルハーフ」は、業務用の技術を家庭用に展開した製品で、油の使用量も油ハネも1/2に低減できるため、財布にやさしく家事負担も軽減できます。
オリーブオイルは、干ばつによる原料価格の高騰を受けてマーケットが一時的に縮小しています。そこで当社は2024年2月、オリーブオイルの風味を楽しめる家庭用ブレンドオイルJOYL「AJINOMOTO オリーブオイルたっぷりクッキングオイル」を発売しました。オリーブオイルとキャノーラ油をブレンドし、お客さまが手に取りやすい価格で好評をいただいています。
当社の主力事業は業務用油脂であり、国内シェアは約4割※を誇ります。 2024年3月のテレビコマーシャルでは初の試みとして、家庭用製品だけでなく業務用製品も登場させました。家庭用紙パックの「スマートグリーンパック®」シリーズとともに業務用長持ち油「長徳®」シリーズの環境配慮について訴求したところ、お取引先さまから「油の一斗缶がテレビコマーシャルに映ったのは初めてだ」と感激の言葉を頂きました。業務用製品は一般の生活者から見えにくく、普段は縁の下の力持ちではありますが、このような工夫をすることで、ユニークな認知拡大が期待できると確信しました。

人財ポリシーの策定とチャレンジする文化
2023年度に人事マネジメントの方向性を整理し、「人的資本経営」の強化を図っています。人的資本のポイントは一人ひとりの成長とエンゲージメントです。挑戦と成長の機会を活かし、強い個が融合したチームとして当社の成長をけん引できるよう、人財ポリシーを策定しました。また、エンゲージメントは企業価値の最大化に向けて必要不可欠な要素で、会社と従業員との信頼関係が高まってこそ、その向上が実現します。
チャレンジすることで得られる成長の実感が、エンゲージメントの向上につながると考えています。会社はさまざまな機会を提供する、従業員はその機会を自分のものにして成長し、意欲を高めて仕事の質を高める、その両輪が回ることで企業価値は向上していきます。私は昨年の統合報告書で「チャレンジする企業風土への変革」として、従業員一人ひとりが新しいことにチャレンジする必要があるとお伝えしました。優秀な従業員が数多くいるのに、一歩を踏み出せないことでチャンスを逃していないか、逆に言うともっと成長できるはずだと期待しているからです。
チャレンジをする仕組みの一つとして、2023年度より、当社の執行役員は人事考課において従業員エンゲージメントの数値目標を設定し、達成を目指す制度に変更しました。エンゲージメントサーベイはわれわれ経営陣の成績表の一つとして、評価としっかり連動させていきます。
PBR1倍に向けて
2023年7月の機構改正で、執行責任の明確化を目的にCxO制を導入したことで、確実にマネジメントの足腰が強くなりました。各CxOおよび役員において、自身の領域・分野に対する責任意識が一層高まり、結果を出すという意識を強く感じています。収益計画の精緻化も進み、2023年度の業績がほぼ計画通りに着地したことで、手応えを得ています。
2024年6月にCSO(Chief Strategy Officer)を新設しました。主に第六期中期経営計画の達成や非連続の価値創造、PBR改善に向けた施策などの領域を担当します。非連続成長に向けた取り組みについては、CSOが複数の案件を常にウオッチし検証していきます。CxOとの連携をさらに強化し、PBR1倍達成に向けて企業価値を高めてまいります。
PBRは成長に対する信頼度を測る指標です。解散価値の1倍を割る現状を打破することはもちろん、当社が本来目指す価値創造ができているかという観点で、信頼度向上の施策を強化していかなければなりません。国内の油脂事業に大きく依存する収益構造から脱却しなければ、当社の持続的成長は見込めません。海外事業の拡大や非連続成長によって収益の多様化を図り、成長が見えるような業績トレンドを示し、株主還元を通じて当社株式への期待を高めてまいります。成長の道筋を提示し「J-オイルミルズは変革する」と期待していただけるよう、スピード感をもって取り組んでまいります。