J-オイルミルズのあゆみ
国際競争の激化と業界再編
健康志向に応える商品やギフト商品など
“プラスα”の高付加価値化を推進
景気拡大が続くなかで昭和が終わり、新しく平成の時代が始まりました。当時、政府は内需主導型経済への転換を方針とし、内需・輸入を拡大していきました。公共投資や住宅投資、設備投資、個人消費が内需主導の牽引役となって好況が続き、1990(平成2)年5月には戦後2番目の大型景気といわれた「岩戸景気」を抜き、翌年には戦後最長の「いざなぎ景気」と並ぶ大型景気となりました。
こうした経済の拡大基調を受けて、製品の高品質化・多機能化も進み、より付加価値の高いものが求められるようになっていきました。多様化するニーズに対応するために、製油業界は、高級油や健康志向に応える油、炒め物やドレッシング専用の機能油など、需要に合わせたさまざまな植物油を開発していきました。日常で使う油脂も一升瓶や金属缶に入った天ぷら油から、中身の見えるプラスチック容器を採用したサラダ油、キャノーラ油へと変化していきます。さらに、製油企業の各社はこの時期に大きく市場が拡大したお中元やお歳暮などの贈答用むけの販路拡大に取り組みました。その後、食品ギフト市場は1994(平成6)年には1兆9,000億円を超える規模となり、製油業界は有名タレントやスポーツ選手を起用したCMを積極的に展開するなど、商品の高付加価値化と油脂製品のイメージ向上を進めていきました。
「イタ飯」ブームや健康・グルメ番組で注目され
オリーブオイルが爆発的なブームに
独特の風味を持つオリーブオイルは、豊年製油のイタリア「FILIPPO BERIO®」ブランドなど、各社が欧米の商品を輸入して販売促進に努めましたが、昭和期まではなかなか一般の家庭には普及していきませんでした。しかし、平成に入ると外食で「イタ飯(イタリア料理)」ブームが起こり、徐々に身近な存在となっていきました。また、1996(平成8)年ごろからTVの健康情報番組やグルメ番組で次々とオリーブオイルが紹介されると、爆発的なブームが訪れました。この時期、味の素(株)がスペイン産の厳選したオリーブオイルを自社ブランドで発売し、市場を確立しました。その後も、オリーブオイル市場は伸長を続け、2018年には家庭用油脂の売上規模でサラダ油、キャノーラ油を凌駕するまで存在を高めていきます。
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阪神・淡路大震災の復興で協力体制が生まれ、
それが業界再編への大きなエポックに1990年代になるとバブルが崩壊し、国内経済は徐々にデフレ色を強めていきます。1995年には阪神・淡路大震災が発生し、吉原製油、ホーネンコーポレーション、日本大豆製油の神戸市内の工場が被災し、甚大な被害となりました。この未曽有の事態に対処するため、製油業界の一部で協力体制が生まれ、このことが後の業界再編において大きなエポックとなりました。
その後、各社は被災から立ち直りを見せますが、デフレ下で需要と供給のギャップが徐々に大きくなり、製油各社の業績は低位に推移していきました。またWTOの設立など、各国間の自由な貿易協定の締結が国際的な課題となる一方、中国をはじめとする新興国の台頭などで、業界は過当競争からの脱却が急務となっていきました。こうした中、味の素(株)は1999年に傘下の東洋製油(株)と油脂の工場である横浜工場を統合し味の素製油(株)を誕生させます。2年後には熊沢製油(株)と味の素(株)の油脂部門もあわせて、油脂事業を完全に分離します。そして同じ年の2001年、(株)ホーネンコーポレーションと味の素製油(株)が経営統合を発表したのが口火となり、業界再編が本格的に始まりました。翌年には共同持株会社として豊年味の素製油(株)を発足し、その翌年には吉原製油(株)も合流して、持株会社(株)J-オイルミルズに社名を変更。2004年7月には、日本大豆製油(株)も含めた事業会社4社が統合し、(株)J-オイルミルズが誕生しました。時を同じくして日清オイリオグループ(株)も誕生するなど、製油業界は新たな時代を迎えました。
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原料本来のおいしさを提供するというネーミングを冠した
「ゴールデン一番しぼりサラダ油」を開発サラッとキレよく カラッと軽く!――1990(平成2)年4月、吉原製油は、このキャッチコピーとともに「ゴールデン一番しぼりサラダ油」を新発売しました。原料本来のおいしさを提供するという「一番しぼり」というネーミングも消費者からは好評でした。アサヒビール(株)の中興の祖である樋口廣太郎氏が2001年1月に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」※のなかにも、こんなエピソードがあります。
“吉原製油の副社長がある時、「樋口さん、うちの『一番しぼり』という油が、ネーミングがいいので売れています。この名前をビールにも使ってみませんか」と言ってくれたのです。私も面白いと思って、やろうかなあと心が動いたのですが、何しろ「スーパードライ」の生産が間に合わない状態の時でした。(中略)そんなこんなで時期尚早かなと思っているうちに、キリンビールさんが「一番搾り」を出したのです。”
※出典:2001年1月に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」および新聞連載に加筆して出版された本「樋口廣太郎わが経営と人生―私の履歴書―」。2013年、日経Bizアカデミーで公開した記事から
私の履歴書/樋口広太郎(9)アサヒ、「一番しぼり」取り逃す(日本経済新聞) -
“LDLコレステロールを下げる油”として
特保の油「味の素KK健康サララ」を開発1996年、味の素(株)(後の味の素製油(株))は「味の素KKオリーブオイル 一番しぼりのエクストラバージン」を発売しました。さらにこれ以降、健康オイルの開発に本格的に着手。世界保健機関(WHO)が「健康寿命」という新たな定義を提唱し、日本でも厚生労働省が国民健康づくり運動「健康日本21」を開始する中、2001年に、家庭用新製品「味の素KK健康サララ」を発売しました。
この商品は有効成分である植物ステロールのはたらきで体内のコレステロール値を下げるもので、特に、LDLコレステロール値を下げることが特徴です。その効果が認められ、2001年に厚生労働省から「保健機能食品(特定保健用食品:特保)」の表示も許可されました。いまも健康オイルの市場は拡大しており、特にコレステロール関連の健康オイルが大きく伸張しています。「健康サララ®」は、現在でも健康への意識が高い人々の間で高い支持を得るロングセラー製品となっています。
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環境対応とユーザビリティを両立した
紙パックの食用油を発売1989年にホーネンコーポレーションは業界初の紙パックのサラダ油「豊年サラダ油パックリーン」を発売しました。この商品は、遮光性があり、空気がほとんど透過しないため油の品質保持に優れ、印刷面を広く取れる利点を活かしデザインを工夫して陳列効果を高めたものでした。さらに1993年には、廃棄時の分別が容易でリサイクルに適した容器を採用した「エコパックス」を発売。食用油容器としては初めて、環境対応型容器として「エコマーク商品」の認定を受けました。プラスチックボトルと比べて樹脂使用量を約65%削減、使用後の紙製外箱とプラスチックの分別も容易でした。(株)J-オイルミルズ設立後の2006年にはリニューアルを実施し、使用時の持ちやすさ、傾けやすさ、滑りにくさなどを改良したほか、環境配慮の観点から大豆油インクも採用しました。こうした点が評価され、2007年度の日本パッケージングコンテストのジャパンスター賞「経済産業大臣賞」、第31回木下賞「改善合理化部門」など、外部から数々の賞を受賞しました。2021(令和3)年8月には、従来の同容量帯容器と比較し約60%のプラスチック使用量削減を実現した「スマートグリーンパック®」を発売し、現在も容器・包装の開発を積極的に推進しています。
各社の主な動き |
社会・業界の動き |
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1989(平成元年) 「株式会社ホーネンコーポレーション」に社名変更 |
1989(昭和64/平成元年) 消費税3% |
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1989(昭和64/平成元年) 菜種油と大豆油の販売量が逆転 |
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1990(平成2) 「一番しぼりサラダ油」発売 |
1990(平成2) 湾岸戦争勃発(~1991年) |
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1992(平成4) 紙パック包装容器に“エコマーク” |
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1993(平成5) 豊年サラダ油「エコパックス」発売 |
1993(平成5) EU発足 |
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1995(平成7) 阪神大震災により工場被災 |
1995(平成7) 兵庫県南部地震 |
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1996(平成8) 味の素オリーブオイルを発売 |
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1996(平成8) オリーブオイルブーム到来 |
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1997(平成9) 消費税5% |
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1997(平成9) 容器包装リサイクル法 |
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1999(平成11) 味の素(株)油脂部門と東洋製油(株)他が統合し、味の素製油(株)を設立 「健康サララ®」発売のちにトクホ取得 |
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2000(平成12) (株)ホーネンコーポレーションとの経営統合を合意 |
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2001(平成13) (株)豊年味の素製油の経営統合に参加発表 |
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2004(平成16) 各事業子会社を吸収合併し、「株式会社J-オイルミルズ」として、事業および事業子会社を完全統合 |