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ジェンダーにとらわれない活躍ー誰もが安心して働くことができる職場環境への取り組みを語る

ジェンダーにとらわれない活躍ー誰もが安心して働くことができる職場環境への取り組みを語る

ジェンダーにとらわれない活躍
ー誰もが安心して働くことができる
職場環境への取り組みを語る

タイトル

2026年1月20日 帝国飲食料新聞社 北川達也

職場でのLGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標」でJ‐オイルミルズが2025年の11月に「シルバー」に認定されたのを機にして、同社人事部DE&I推進室の後藤亜弓室長と土倉則子氏に話をきいた。多彩な活動に力を注いでいるのが効果をあげて性的マイノリティに対する周囲の理解はすこしずつ進んでいると語る一方で、当事者のために設けた制度などが本紙の取材時点ではまだ利用されていないという。そうした環境整備を推し進めることに慎重な声もあるが、皆が能力を最大限に発揮して仕事に取り組めるようにするのがDE&I推進室のミッションだと力強くのべた。

D&I推進室を新設

――DE&I推進室を新設されたのはいつですか。
2022年です。2018年にまずは女性活躍のための活動を広げる「カシオペアWプロジェクト」チームを発足し、徐々に障がい者やシニア、個人内多様性、LGBTQ+に対象を広げ、エクイティ(公正性)という考え方とインクルージョンを目指して活動してきたことが背景にあります。その後取り組みが会社の経営に資する必要なものと判断され、DE&I推進の施策を組織として本格化するため、「DE&I推進室」が設立されました。
――DE&I推進における重点テーマのひとつに「ジェンダーにとらわれない活躍」をあげています。その一環としてLGBTQ+当事者が安心して働ける環境の整備に努めているとのことです。
LGBTQ+当事者が自分を抑えて生きていかなくてはいけない状況をなくしたいと考えています。従業員全員が安心して仕事に取り組めることが会社にとっても大事であり、その環境を醸成することがDE&I推進室のミッションです。
そのために様々な活動をしています。

「PRIDE指標2025」で「シルバー」に認定

「PRIDE指標2025」で「シルバー」に認定
――たとえばどういった活動を行っているのでしょうか。
2025年4月に「同性パートナーシップ制度」を導入しました。LGBTQ+当事者と同性パートナー、そのパートナーの家族を対象にした制度で、家族手当の支給や社宅の利用を認めたりするものです。法律婚をしていなければ受けられない権利保護があるため、当社が規定する範囲内で対象者にそれらの制度利用を認めています。これは「PRIDE指標※12025」で「シルバー」に認定された大きな理由の一つにもなっています。
「同性パートナーシップ制度」を導入するのに合わせて相談窓口も開設しました。制度の利用にあたっては当事者にしかわからない不安や心配もあると思いますので、利用するか否か検討するための相談窓口としています。また、制度利用についてだけでなく、職場での悩みや不安など、どのようなことでも受け付けます。
――同性パートナーシップ制度や相談窓口を利用した方はこれまでにいらっしゃいますか。
まだいません。制度や相談窓口を利用しないという考えをもつ方もいるとは思いますが、周囲が当事者をどのように受け止めているのかがわからない中で相談窓口や制度を利用することに不安を感じる方もいるのかもしれません。当事者であることを他の方に知られるという不安です。アウティング※2をされる恐れがあるのだと思います。
制度や相談窓口の存在が当事者全員に伝わっているのか分からないのも悩みです。当然のことながら全社に向けて情報を発信してはいますが、十分には届いていないのかもしれません。周知方法を変えるなど、工夫を凝らしていくことが必要と考えています。
世界で約10人にひとりがLGBTQ+とされています。当社だと100人ほどの当事者がいるという推計値になり、不安を抱えながら仕事をしている方は多いはずです。
他社では、導入から数年後に制度利用の申請があったケースが多いと聞きます。当社でもある程度の時間がかかるのかもしれませんが、遠い先のことだとは思っていません。例えばドラマ番組でLGBTQ+を取り上げるシーンが増えるなど、世の中も変わってきています。
制度や相談窓口を利用しても大丈夫だと当事者が感じられるようにすることが重要です。

「アライ(Ally)」を増やすことの大切さ

「アライ(Ally)」を増やすことの大切さ
――当事者が安心して制度や相談窓口を利用できるようにするには、どのような取り組みが必要でしょうか。
周囲にいる従業員一人ひとりのLGBTQ+への理解がまず肝心です。LGBTQ+当事者に寄り添う「アライ※3」を増やすことに繋がります。理解を促進するためのひとつの方策として、当事者をテーマにした映画の上映会を2024年の11月から翌年の4月にかけて本社や研究所や工場で開催しました。映画を上映する前にLGBTQ+とは何かというところからセミナーを行って理解を促進し、上映後にはグループディスカッションをしてその内容を発表してもらいました。
映画上映会には社内からのべ140人が参加しました。参加者はディスカッションにも熱心で、「自分はLGBTQ+に対してこう考えている」といった普段なら中々聞けないような話もしてくれました。映画で日常のシーンが描かれていることもあって、「こういうことに気をつけなければいけないのだな」としっかりと理解してもらえたと思っています。
――他に取り組んでいることも教えてください。
映画上映とは別に、キックオフとして2024年9月に役員と管理職を対象として、講師を招いてセミナーを開催しています。また、2025年11月には採用担当者を対象として、面接を受けにこられた方がカミングアウトをした際にどのように対応すべきなのかもテーマにしました。予め学んでおくことで、他者への理解を深めることができます。
――カミングアウトを受けた際のしかるべき対応をどのようなものだと考えますか。
まずはしっかりと受け止めることです。感謝を伝える言葉で、相手の思いを受け止めた姿勢を示すことも大切です。自分らしく働けるのかどうかということがLGBTQ+当事者にとって重要なことだと思いますので、働く上でなにか心配なことはないかと尋ねるのも大切だと考えています。

レインボー宣言

――他にも実施していることがあれば聞かせてください。
「レインボー宣言」として、2024年に社内に向けてトップメッセージを発信しました。同時にトップが『「アライ」宣言』も行うなど、従業員に対して会社の本気度をしっかりと伝えました。
社内SNSでの発信もしています。例えば、先ほどお話した映画上映会をすべての事業所で実施できているわけではないので、実施内容を掲載しました。また6月は「PRIDE月間」について、12月には「人権週間」に合わせてLGBTQ+当事者の人権に関する情報も発信しました。
――さまざまな取り組みによって、理解が進んできたと感じますか。
少しずつ進んできていると思います。アンケートの回答に『自分も「アライ」として何かしたい』という声も出てきました。しかし、それを実際に声に出し、その思いが可視化されて、形として好影響を及ぼすまでには至っていないのが現状です。可視化する機会を会社として作っていく必要があると考えています。
――LGBTQ+当事者からのアクションがあれば、リアクションというかたちで「アライ」が可視化されそうですが、最初のアクションがなければ難しいような気もします。
当時の当社トップの「レインボー宣言」の話をしましたが、レインボーカラーのアイテムは「アライ」であることを表明するものでもあるので、私はレインボーカラーのネックストラップを使うことによって、自分が「アライ」だと示しています。また、社内のウェブミーティングのときには背景をレインボーカラーのものにしています。人権週間にはその壁紙を社内の従業員に配布したりもしました。
目に見える形で「アライ」を示すことでLGBTQ+当事者が『あの人は「アライ」なのだな』とわかって安心して働けることが大きいです。
――今後特に注力することや、ここまででお話しになっていないことで他に伝えたいことを教えてください。
従業員の理解は少しずつ進んできていると思います。DE&I推進室から発信する情報に興味をもち、関心を寄せてもらうために、これからもさまざまな取り組みを進めていきます。

※1 LGBTQ+など性的マイノリティが働きやすい職場づくりを日本で実現するためにwork with Prideが2016年に策定した日本で初めてとなるLGBTQ+に関する企業・団体等の取り組みの評価指標。Policy(行動宣言)、Representation(当事者コミュニティ)、Inspiration(啓発活動)、Development(人事制度・プログラム)、Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)の5つの指標で構成されており、各指標内で指定の要件を満たしていれば点数が付与され、点数により、ゴールド、シルバー、ブロンズとして企業・団体が認定される。
※2 本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること。
※3 LGBTQ+をはじめとするマイノリティを理解し支援する考え方そのものや、理解者・支持者であることを表明する人たちを表す言葉。

人事部DE&I推進室の後藤亜弓室長と土倉則子氏
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