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技術開発

おいしさや、健康、低負荷の観点で新たな価値を生み出すため、油やスターチを中心に食を科学しています。また、顧客や社会が抱える課題の解決を視野に、新素材の開発にも取り組んでいます。

基盤技術

油っぽさの解消

口の中に油感や油臭さが残るいわゆる「油っぽさ」を感じると、食品のおいしさは半減してしまいます。当社独自の技術で、油っぽさ・油臭さの原因である成分の生成と働きを抑えることにより、食感・風味の両方で「油っぽくない」を実現し、また食品に合わせた油の研究・開発により、油っぽさの解消に取り組んでいます。

ドーナツの特性に対するフライ油の影響

ドーナツの美味しさと泣き(油染み)に重要な因子を特定し、ドーナツに適したフライ油に関する検討を行いました。様々なフライ油で評価した結果、フライ油の上昇融点がドーナツの油染み量と、30℃での固体脂含量が油っぽさやパサついた食感と関連することを見出しました。上昇融点は概ね40℃以上、かつ30℃での固体脂含量が20%程度の油が、物性・官能的にドーナツに適していることが分かりました。

さらには、上記の特長を持つ油のヒトでの吸収性を評価した結果、キャノーラ油(液体油)と比べて体内への吸収性が低い油であることが明らかとなりました。
(日本食品科学工学会誌 61, 346-352, 2014)

ドーナツ2個を食べた際に吸収されなかった油の量を比較(健康な成人20名の平均)

健康価値の向上

研究成果(例:ビタミンK2摂取量の研究)

ビタミンK2(メナキノン-7)とは?

ビタミンKは、当初は血液凝固の維持に不可欠なビタミンとして発見されましたが、近年では体の中で様々な役割を果たすことがわかってきました。特に、骨の健康維持に欠くことが出来ない重要な成分として重要性が高まっています。食事から摂取できる主なビタミンKには、緑色野菜に含まれるビタミンK1と、納豆に多く含まれるビタミンK2(メナキノン-7)があります。

骨の健康にはカルシウム!という方が多いと思いますが、カルシウムだけを一生懸命摂取しても、骨には届きません。なぜなら、摂取したカルシウムを骨に運び、骨を作るタンパク質(オステオカルシン)を上手に働かせなければならないからです。ビタミンKは、この骨を作るタンパク質を活性化できる唯一のビタミンです。

効果が得られる摂取量の解明

ビタミンK2がオステオカルシンを活性化し、骨の健康に役立つことは知られていましたが、最低限どの程度の量を摂取すれば効果が得られるのかは良くわかっていませんでした。そこで、日本人ボランティアの方々にご協力いただき、この疑問を解明する研究を行いました。 通常の食事に加えて、ビタミンK2(メナキノン-7)を毎日100μg摂取すれば骨を作るタンパク質の機能を保ち、骨の健康状態を維持・改善できることを明らかにしました。(Journal of Nutritional Science and Vitaminology Vol. 61 (2015) No. 6 p. 471-480 日本人での詳細な研究は我々J-オイルミルズが初めて行いました)

高齢化が進んでいるわが国において、骨粗鬆症による骨折は寝たきりの主要な原因の一つです。骨の健康の維持・改善のため、ビタミンK2を積極的に摂ることの重要性を啓発し、食事による健康維持に貢献して行きたいと思います。

安⼼・安全に関する研究開発(例:トランス脂肪酸)

近年、健康志向の高まりや科学的知見の蓄積に伴い、お客さまにとって脂質に関する情報が食品を選択する上で重要な指標となっています。脂質に関連するハザードの一つにトランス脂肪酸が挙げられますが、当社ではお客さまにより一層の安心・安全を提供するため、政府・業界団体の指針でもあるトランス脂肪酸の低減に継続的に取り組んでいます。
一般的に、マーガリン類はトランス脂肪酸を多く含む食品と言われていますが、当社ではマーガリン類の原料となる油脂の開発や組み合わせ、独自の乳化技術などを活用して、マーガリン類としての機能 (塗りやすさ、おいしさ) と両立してトランス脂肪酸の低減に取り組んでいます。また、マーガリン類に限らず、その他製品についても原料の見直しや素材開発、生産条件の最適化などに取り組んでおり、お客さまの更なる安心に貢献できるように、トランス脂肪酸の低減に努めています。

社内外との連携

新たな価値を⽣むために、当社独⾃の研究に加えて、⼤学などの他の研究機関とも積極的に共同研究を⾏っています。

当社は2019年4月から、東北大学大学院農学研究科と食用油の酸化に関する共同研究講座(J-オイルミルズ 油脂イノベーション共同研究講座)を開講しています。

本共同研究講座では、

  1. 油脂の酸化によって生成する過酸化脂質やそれらから生じる二次酸化生成物を対象として新たな分析技術を確立することで、油脂の様々な酸化反応で生成される成分を把握すること
  2. 酸化によって発生する事象のキーポイントを理解して制御すべきポイントを明らかにし、油脂の新たな応用可能性を探索すること

を主な目的として取り組んでいます。
これまでの研究の結果、共同チームは酸化した油脂を詳細に分析する方法を複数構築し、複雑な反応を一定程度把握することに成功しました。今後酸化のメカニズムや酸化物の性質の解明をさらに進め、酸化のコントロール技術の確立、強化を目指していきます。
東北大学との共同研究を深化させることで、食用油脂の可能性を引き出し、当社が重要課題と位置付ける「環境負荷の抑制」「食資源の維持」にも一層貢献してまいります。
また、こうして開発した技術をタイムリーに商品へと活⽤する事に加え、学会活動や論⽂などの形で成果をアウトプットしており、社会全体の技術の進歩にも貢献しています。

油脂中の酸化物の分析について

油脂中には様々な抗酸化物質が含まれていますが、その挙動を把握することは困難です。今回の研究では、油脂に含まれる代表的な抗酸化物質であるトコフェロール(ビタミンE)が酸化されて生成する、ごく微量なトコフェロールヒドロペルオキシドおよびトコフェリルキノンの分析を、タンデム四重極型質量分析計を用いて確立することに成功しました。
本研究により、これまで詳細に把握できていなかった油脂中の抗酸化物質の挙動が把握できるようになり、このことは脂質の酸化の理解ならびに制御に重要な知見であると考えています。

Analysis of oxidation products of a-tocopherol in extra virgin olive oil
using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.

タイトル:Analysis of oxidation products of a-tocopherol in extra virgin olive oil using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
著者:Rena Tanno, Shunji Kato, Naoki Shimizu, Junya Ito, Shuntaro Sato, Yusuke Ogura, Masayoshi Sakaino,Takashi Sano, Takahiro Eitsuka, Shigefumi Kuwahara, Teruo Miyazawa, Kiyotaka Nakagawa
掲載誌:Food Chemistry 306 (2020) 1 25582 DOI:https://doi.org /10.1016/j.foodchem.2019.125582

知的財産に関する取り組み

「おいしさデザイン®︎」を追求し、お客さまにハッピーをお届けするために欠かせないのが知的財産に関する取り組みです。
J-オイルミルズでは、知的財産(知財)活動を事業活動に不可欠な活動と位置づけており、研究開発部門に知財に関する専門組織を設け、権利取得を積極的に推進するとともに、他者からの権利侵害については、関連法規に基づいて適切に対応いたします。
同時に、他者の権利に抵触することのないよう第三者の知的財産を尊重するための取り組みに力を注いでまいります。
J-オイルミルズでは、当社独自の技術の戦略的な保護を研究開発部門の重要な業務目標と位置付けており、過去5年間の特許出願件数は1.5倍に増加しています。

1. 知的財産権による当社技術の保護
研究開発で得られた発明や当社の事業戦略上重要な発明について積極的に特許出願をし、権利取得を目指しています。そのために、技術開発組織の定期ミーティングに参加し、発明の発掘を行っています。
2. 知財戦略立案および事業・研究戦略立案支援
パテントマップを活用して、特許情報の収集、解析、評価を行い、知財戦略立案および事業・研究戦略立案支援を進めています。
3. 他社権利侵害リスク予防
製品発売前に調査を実施し、他社権利侵害予防に努めています。
4. 知的財産権に関する教育、意識向上
技術開発組織の入社1~2年目社員にe-ラーニングによる特許入門講座、中堅社員にあるテーマに沿った特許勉強会を実施しています。また、外部の特許講座への積極的参加の促進により、知的財産権に関する教育の推進と、意識向上に努めています。