技術開発

おいしさや健康で新たな価値を生み出すため、油やスターチを中心に食を科学しています。また、顧客や社会が抱える課題の解決を視野に、新素材の開発にも取り組んでいます。

基盤技術

油の酸化抑制に関する研究(例:長調得徳®︎

揚げ調理に使用される油は使っているうちに風味が悪くなるため、数日おきに交換する必要があります。これは油の酸化によって引き起こされる現象です。当社は油がどのような機構で酸化されるのかを科学し、油の酸化を抑えられる技術を開発しました。この技術を活用した長調得徳は通常よりも長く使用できる油としてお客さまに価値を認められています。油が長持ちすることで原料となる植物の使用量を減らすことができ、社会の課題にも貢献しています。

おいしさに関する研究(例:美味得徳®︎

「お肉屋さんのコロッケはなぜおいしいのか?」という疑問から、油のおいしさを科学して、キーとなる成分を見つけました。さらに、この成分を活用する技術を開発し、J-オイルミルズ独自の強みとして、様々な商品やソリューションに貢献しています。その商品の一つである美味得徳は油にコクを与えることが可能で、動物脂の代替として使用されています。

他にも、おいしさは味だけでなく、食感や見た目も重要です。当社では、独自のスターチ素材を開発することで、食品のおいしさ向上に貢献しています。また、独自のスターチ素材の中には機能性を持つものもあり、様々なお客さまから評価を頂いています。

健康価値の向上

研究成果(例:ビタミンK2摂取量の研究)

ビタミンK2(メナキノン-7)とは?

ビタミンKは、当初は血液凝固の維持に不可欠なビタミンとして発見されましたが、近年では体の中で様々な役割を果たすことがわかってきました。特に、骨の健康維持に欠くことが出来ない重要な成分として重要性が高まっています。食事から摂取できる主なビタミンKには、緑色野菜に含まれるビタミンK1と、納豆に多く含まれるビタミンK2(メナキノン-7)があります。

骨の健康にはカルシウム!という方が多いと思いますが、カルシウムだけを一生懸命摂取しても、骨には届きません。なぜなら、摂取したカルシウムを骨に運び、骨を作るタンパク質(オステオカルシン)を上手に働かせなければならないからです。ビタミンKは、この骨を作るタンパク質を活性化できる唯一のビタミンです。

効果が得られる摂取量の解明

ビタミンK2がオステオカルシンを活性化し、骨の健康に役立つことは知られていましたが、最低限どの程度の量を摂取すれば効果が得られるのかは良くわかっていませんでした。そこで、日本人ボランティアの方々にご協力いただき、この疑問を解明する研究を行いました。 通常の食事に加えて、ビタミンK2(メナキノン-7)を毎日100μg摂取すれば骨を作るタンパク質の機能を保ち、骨の健康状態を維持・改善できることを明らかにしました。(Journal of Nutritional Science and Vitaminology Vol. 61 (2015) No. 6 p. 471-480 日本人での詳細な研究は我々J-オイルミルズが初めて行いました)

高齢化が進んでいるわが国において、骨粗鬆症による骨折は寝たきりの主要な原因の一つです。骨の健康の維持・改善のため、ビタミンK2を積極的に摂ることの重要性を啓発し、食事による健康維持に貢献して行きたいと思います。

安⼼・安全に関する研究開発(例:トランス脂肪酸)

近年、健康志向の高まりや科学的知見の蓄積に伴い、お客さまにとって脂質に関する情報が食品を選択する上で重要な指標となっています。脂質に関連するハザードの一つにトランス脂肪酸が挙げられますが、当社ではお客さまにより一層の安心・安全を提供するため、政府・業界団体の指針でもあるトランス脂肪酸の低減に継続的に取り組んでいます。
一般的に、マーガリン類はトランス脂肪酸を多く含む食品と言われていますが、当社ではマーガリン類の原料となる油脂の開発や組み合わせ、独自の乳化技術などを活用して、マーガリン類としての機能 (塗りやすさ、おいしさ) と両立してトランス脂肪酸の低減に取り組んでいます。また、マーガリン類に限らず、その他製品についても原料の見直しや素材開発、生産条件の最適化などに取り組んでおり、お客さまの更なる安心に貢献できるように、トランス脂肪酸の低減に努めています。

社内外との連携

新たな価値を⽣むために、当社独⾃の研究に加えて、⼤学などの他の研究機関とも積極的に共同研究を⾏っています。

当社は2019年4月から2022年3月まで、東北大学大学院農学研究科と食用油の酸化に関する共同研究講座(J-オイルミルズ 油脂イノベーション共同研究講座)を開講しています。

本共同研究講座では、

  1. 油脂の酸化によって生成する過酸化脂質やそれらから生じる二次酸化生成物を対象として新たな分析技術を確立することで、油脂の様々な酸化反応で生成される成分を把握すること
  2. 酸化によって発生する事象のキーポイントを理解して制御すべきポイントを明らかにし、油脂の新たな応用可能性を探索すること

を主な目的として取り組んでいます。
共同研究講座を通じて、これまで見出されていなかった油脂の活用手法および新技術開発の提供を可能にすることで、さらなる油脂資源の有益利用に貢献してまいります。
また、こうして開発した技術をタイムリーに商品へと活⽤する事に加え、学会活動や論⽂などの形で成果をアウトプットしており、社会全体の技術の進歩にも貢献しています。

油脂中の酸化物の分析について

油脂中には様々な抗酸化物質が含まれていますが、その挙動を把握することは困難です。今回の研究では、油脂に含まれる代表的な抗酸化物質であるトコフェロール(ビタミンE)が酸化されて生成する、ごく微量なトコフェロールヒドロペルオキシドおよびトコフェリルキノンの分析を、タンデム四重極型質量分析計を用いて確立することに成功しました。
本研究により、これまで詳細に把握できていなかった油脂中の抗酸化物質の挙動が把握できるようになり、このことは脂質の酸化の理解ならびに制御に重要な知見であると考えています。

Analysis of oxidation products of a-tocopherol in extra virgin olive oil
using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.

タイトル:Analysis of oxidation products of a-tocopherol in extra virgin olive oil using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
著者:Rena Tanno, Shunji Kato, Naoki Shimizu, Junya Ito, Shuntaro Sato, Yusuke Ogura, Masayoshi Sakaino,Takashi Sano, Takahiro Eitsuka, Shigefumi Kuwahara, Teruo Miyazawa, Kiyotaka Nakagawa
掲載誌:Food Chemistry 306 (2020) 1 25582 DOI:https://doi.org /10.1016/j.foodchem.2019.125582