サプライチェーンマネジメント
概要
当社グループは、世界各地から原料となる大豆や菜種などを輸入し、さまざまな製品に製造・加工・販売をしていることから、サプライチェーン全体における環境や人権への配慮、品質と安全性の確保は企業として当然の責務であると考えています。サステナブルなサプライチェーンを構築するため、社会・環境課題に向き合い、取り組みの指標としての各種方針の整備や、サプライチェーンの適切なマネジメントのための体制整備に取り組んでいます。
方針
持続可能な調達の実効性を高めるためには、サプライヤーの皆さまとの協働が重要です。当社グループは、「人権方針」や「環境方針」を基盤に、2011年に「サステナブル調達方針・調達基準」を定め、自社だけでなくサプライヤーの皆さまにも順守をお願いしています。また、各原料に関する諸課題に積極的に対応するため、2020年に「パーム油調達方針」、2022年に「大豆調達方針」を策定しました。各種方針の策定後は、人権や環境についての記述を強化するなど、随時見直しを図っています。
大豆調達方針
大豆は当社の事業活動を支える重要な原料の一つです。食用油や各種大豆加工食品などの用途に加え、バイオディーゼル燃料、家畜の飼料など食用以外の用途でも広く利用されており、国際的な大豆への需要は増加の一途をたどっています。その一方で、大豆の生産活動によって引き起こされる可能性がある森林破壊などの環境問題、先住民、労働者の人権侵害などといった社会問題の存在が指摘されています。
当社では、主に米国、ブラジルから大豆を調達し、製品を製造してお客様に供給しています。原料の調達に際しては「サステナブル調達方針・調達基準」に基づき、持続可能性の向上に取り組んでいますが、大豆に関しては環境や人権に配慮した調達を行うため特に「大豆調達方針」を定めるとともに、責任ある大豆に関する円卓会議(RTRS※)に加盟しています。食を支える企業として、社会的責任を果たすためトレーサビリティの向上を目指し、透明で責任ある大豆の調達に努めてまいります。
※Round Table on Responsible Soy Association: 2006年にスイスのチューリッヒで設立された責任ある大豆の生産、取引、利用の拡大を促進する非営利団体です。
パーム油調達方針
アブラヤシから搾油されるパーム油は、我々の生活に欠かせない油脂ですが、近年、その生産過程では森林減少やそれに伴う生物多様性の喪失、現地労働者の人権問題などが指摘されています。油脂原料の中でも特に課題の多いパーム油について、責任ある調達を実行するため、J-オイルミルズは2011年に「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)に加盟し、横浜工場でRSPO認証パーム油を扱うための工場認証を取得しました。また2020年、環境や人権に配慮したパーム油調達に関する考え方を「パーム油調達方針」として定めています。
トレーサビリティの向上
食を取り巻く環境は多岐にわたる課題を抱えています。
気候変動による穀物の収穫量減少や新型コロナウイルス感染症の世界的拡大による労働者不足などにより穀物・植物油需給がひっ迫し、その結果として価格変動リスクも高まっています。
また、原料調達においては、安全性や品質の確保、労働者の人権への配慮も重要です。
当社は、持続可能な原料調達のため、パーム油のトレーサビリティ向上に取り組むとともに、大豆調達についても情報収集を開始しました。
企業は新たな課題やニーズを敏感にとらえ、その責任を果たしつつ、新たな価値を提供することにより、環境や社会課題の解決に能動的に取り組まなければなりません。経済、環境、社会・労働環境、すべてにおいてサステナビリティを追求し、ESG経営を推進していきます。
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2024年の取り組み
年月 活動内容 2024年11月 スペイン オリーブ産地、サプライヤー訪問 2024年11月 RSPO年次総会参加 2024年11月 マレーシア パーム農園、サプライヤー訪問 2024年11月 オーストラリア オリーブ油サプライヤー訪問 2024年10月 米国、カナダ 大豆・菜種輸出業者訪問 2024年9月 米国 大豆産地、輸出港視察 2024年8月 カナダ 菜種産地、輸出港視察 2024年8月 米国 大豆産地 カナダ 菜種産地視察 2024年7月 ギリシャ、イタリア オリーブ産地、サプライヤー訪問 2024年7月 カナダ 菜種産地、輸出港視察 2024年3月 オーストラリア 菜種輸出業者訪問 2024年3月 ブラジル 大豆産地、輸出港視察 2024年2月 スペイン オリーブ油サプライヤー訪問
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2023年の取り組み
年月 活動内容 2023年12月 ギリシャ、トルコ オリーブオイル農園視察・サプライヤー訪問 2023年10月 スペイン、イタリア オリーブオイル農園視察・サプライヤー訪問 2023年9月 米国 大豆産地視察 2023年7月 - スペイン、イタリア オリーブオイルサプライヤー訪問
- オランダ、ベルギー バターサプライヤー訪問
- カナダ 菜種輸出港湾視察
2023年3月 - 大豆産地・輸出港湾視察
- 米国 大豆輸出港湾視察
2023年2月 - スペイン オリーブオイルサプライヤー訪問
- アイルランド バターサプライヤー訪問
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2022年の取り組み
年月 活動内容 2022年11月 - RTRS年次総会参加
- RSPO年次総会参加
2022年10月 アメリカ、カナダ産地視察 2022年9月 - スペイン オリーブオイルサプライヤー訪問
- アイルランド バターサプライヤー訪問
2022年4月 - スペイン オリーブサプライヤー訪問
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2020年の取り組み
年月 活動内容 2020年2月 スペイン 菜種サプライヤー訪問
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2019年の取り組み
年月 活動内容 2019年11月 - スペイン、イタリア オリーブオイル農園訪問
- RSPO年次総会参加
2019年8月 - アメリカ スターチ用バラエティコーン農家訪問
- インドネシア パーム油サプライヤー訪問
2019年7月 カナダ 菜種搾油工場訪問 2019年6月 RTRS年次総会聴講 2019年5月 - オーストラリア オリーブ農園訪問
- マレーシア パーム油サプライヤー訪問
※2020、2021年度はコロナ禍で海外視察無し
パーム油サプライヤートレーサビリティ調査
パーム油トレーサビリティ調査は、パーム油の供給チェーン全体を追跡し、各段階を明確にするプロセスです。持続可能な生産方法の確認、環境保護、社会的責任の確保を目的としています。
当社は2018年度にトレーサビリティを開始、2019年度にパーム油精製工場までのトレース率100%を、2021年度にパーム油搾油工場までのトレース率100%を、それぞれ達成しました。現在は、農園 までのトレーサビリティ100%を2030年度までに達成することをマテリアリティの定量目標としています。2023年度の農園までのトレース率は40.7%であり、2024年度の目標は50%です。

サプライヤーの皆さまとの連携
サステナビリティ条項入り契約書・同意書の締結
当社の「サステナブル調達方針・調達基準」に沿った調達ができるよう、サステナビリティ条項入りの契約書・同意書の締結を進めています。
サステナビリティへの取り組み状況の確認
自社だけでなくサプライヤーの皆さまに「サステナブル調達方針・調達基準」への順守をお願いするとともに、2022年度よりグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが作成した「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」(GCNJ共通SAQ)※1を用いて、原料・資材等を扱うお取引先さまへ調査を実施し、サステナビリティへの取り組み状況を確認しています。2023年度には、対象範囲を広げ追加調査を実施しました。今後も定期的に調査を実施し、責任あるサプライチェーンの構築に努めます。
※1 この質問表は、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが作成しており、国際的規範に基づき、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗の防止の4分野に関わる10原則を反映した設問で構成されています。- 調査対象:原料・資材等を扱うお取引先さま
- 調査対象企業カバー率: 原料・資材調達金額の約80%
現地調査の実施
人権、環境等に課題が存在する可能性のある原材料産地に関しては、現地訪問・対話なども重要であると理解しており、取り組みを始めています。2023年度には、マレーシアのパーム油産業の実態把握に向けた調査を実施いたしました。
取り組み
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「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言を提出
当社は、政府が公表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を踏まえ、持続可能な物流網の構築を推進するため2023年12月に「自主行動計画」を策定し政府に提出しました。
当社の「自主行動計画」の主な内容
物流業務の効率化・合理化- 荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間を把握するため、トラック予約システムの導入を図る。
- 積載効率向上のため、取引先へ発注数量の改善を依頼する。
- 発注から納品までのリードタイムを確保し、適切な運行スケジュールが組めるように取り組む。
- 荷役作業等にかかる対価として、附帯作業を物流事業者と協議して契約書等へ明記する。
- 契約の合理化を目指し、サーチャージ(燃料・電力)等の導入に努める。
- 異常気象時等の運行の中止・中断等を物流事業者が必要と判断した場合は、その判断を尊重する。
※関連するプレリリース:物流の適正化・生産性向上に向けた「自主行動計画」を策定 〜持続可能な物流網の構築を推進〜|プレスルーム|JOYL - J-オイルミルズ (j-oil.com)(Japanese text only)
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パートナーシップ構築宣言
当社は、経団連会長、日本商工会議所会頭、日本労働組合連合会会長及び関係大臣(内閣府、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」が創設した「パートナーシップ構築宣言」の趣旨に賛同し、当社の「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。
「パートナーシップ構築宣言」は、サプライチェーンの各お取引先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、企業の代表者名で宣言するものです。当社は、パートナーシップ構築宣言にあたり、以下の個別項目を明示しています。今後もお取引先の皆さまとのパートナーシップを強化し、サプライチェーン全体の付加価値向上に取り組んでいきます。- 従業員向けの「物流ハンドブック」を作成し、従業員への物流危機への理解促進と発注、配送の社内ルールの徹底に取り組むとともに、需給管理の可視化、物流・営業部門の連携を強め、業務の整流化を進めます。
- 商品の外装表示標準化に取り組み、ドライバーおよび倉庫作業者の商品仕分け・検品時の作業効率向上を図ります。
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Sedex
当社は、2019年に、世界規模で企業とサプライヤーを結ぶ共通のプラットフォームを提供している、SedexにA/B会員※として入会しました。
Sedexは、グローバルサプライチェーンにおける倫理的で責任あるビジネス慣行の実現を目指し、サプライチェーンデータを管理・共有する世界最大のプラットフォームです。顧客とサプライヤーが共通のプラットフォームを活用して情報を共有し、サプライヤーにおける問題点を抽出するとともに、その課題解決への取り組み状況を把握し、サステナブルな事業慣行の拡大に取り組んでいます。 Sedexに入会すると、「労働基準」、「安全衛生」、「環境」、「ビジネス倫理」の4領域に関する世界共通のサプライヤーアンケート(SAQ:Self Assessment Questionnaire)に回答することが求められます。当社では今後Sedexのプログラムを有効活用し、グローバルな視点でサプライチェーンのサステナブルな課題の把握と、その改善に取り組んでいきます。※A/B会員:バイヤー機能を持つA会員と、サプライヤーとしてSAQに回答するB会員の両方の資格を持つ。
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GH社(グッドホープ社)との協働
当社と資本・業務提携をしているPremium Vegetable Oils Sdn Bhd (PVO社)は、マレーシアを拠点とする油脂加工品会社です。PVO社の親会社であるPremium Nutrients Private Limited(PNPL社)は、シンガポールに本社を置く大手パーム油プランテーションおよび油脂生産事業会社であるGoodhope Asia Holdings(以下:GH社)の完全子会社にあたります。
GH社は、事業全体において森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(No deforestation, No Peat, No Exploitation:NDPE)などの原則をサプライチェーン全体に適用し、持続可能性への取り組みにおいて高い評価を獲得しています。また、自社農園のある地域やその周辺地域社会の持続可能な経済活動支援も行っており、その中には小規模農園支援や自社農園内のヘルスケア、教育施設の整備なども含まれています。当社は、GH社との協働を、持続可能な調達のための取り組みとして推進していきたいと考えています。GH社HP
http://www.goodhopeholdings.com/GH社の工場 PVO社の工場
得点率70%以上
得点率40-70%未満
得点率40%未満
(2022-2023年度累計実績)
※質問書の再提出があったお取引先さまについては最新の結果にて集計