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マネジメント鼎談「人的資本」

重要な経営資源である人的資本の価値を最大限に引き出し、企業価値向上につなげるべく、それぞれの担当領域や経験から意見を交わしました。

人的資本の基本的な考え方

第六期中期経営計画の目標達成や中長期的な成長の実現に向け、当社の最も重要な資本は人財です。そのためにも目指すべき目標に向かって実行力を高める人財育成が不可欠で、企業理念体系や経営戦略を共通認識として浸透させることが重要と考えています。

当社の目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを®-」の実現を果たすため、人財の重要性を強く意識しています。当社では2024年に人事マネジメントの方向性を個々の価値創出力を最大化する「人的資本」と定め、人財ポリシーを制定しました。この1年間は、「挑戦や成長を力強く体現する個の輩出」と、「強い個がチームとして活躍」するための制度や職場環境の整備に注力してきました。

お二人がおっしゃった視点は、持続的な人的資本経営において非常に大切です。私は当社の人的資本経営において最も重要なことは、経営戦略と連動した人的資本戦略を策定し、着実に実行することと考えています。

代表取締役社長執行役員 CEO 春山 裕一郎

当社の持続的成長を考える中で、中長期的に想定される事業環境の変化に適応していく必要があります。特に、いわゆるVUCAの時代における外部環境の加速度的な変化に対して、迅速に、場合によっては先回りしてその変化に対応しつつ、当社の強みである「おいしさデザイン®」力を徹底的に磨き上げることで、当社のポジショニングと企業価値を高めていきたいと考えています。当社のビジョンを実現するためのドライバーは、多様性かつ専門性の高い人財の充実と自律的に動く組織文化の醸成だと思います。執行として、当社のバリューである「壁を越え、共に挑み、期待を超える」、そういう人財と組織文化を構築するための人的資本経営を推進していきます。

持続的な企業価値向上には企業活動の基盤となる「人的資本」への取り組みが重要であるとの考えから、当社はサステナビリティ委員会の傘下に「人的資本部会」を設置し、従業員がこれまで以上に成長できるような制度や職場環境の整備を行い、成長への原動力となるよう取り組んでまいりましたが、経営・事業戦略に即した人的資本戦略を策定するとともに戦略の実行性を強化すべく、これを発展的に解消し、2025年4月より新たに「人財委員会」を設置することを決定いたしました。当社の最優先課題は人財の育成と自律性を持った組織文化の醸成です。
当社には非常に専門性の高い人財が結集しているため、より一層専門性を高めてもらえるようバックアップすることに加え、変化に対して組織として果敢に変革を推進するためのミドルマネジメント層の育成や事業部門間でのローテーションの実施による変化への挑戦と成長の実現が必要です。また、多面的な視野やスキルを得るためのローテーション実施による人財育成に加え、次世代の経営人財育成にも取り組んでいます。

私はこれまでのナショナルチェーンの大手小売や外食企業でマネジメントをしてきた経験から、企業にとっての人財の大切さは身に染みて感じています。企業には、さまざまな役割を持つ従業員がいます。それぞれが自分の役割を精いっぱい果たすことで企業は活動でき、成長に向けた取り組みを進められます。だからこそ、私はその一人ひとりを常に認知し、各人が目指す姿を実現できるよう、そしてあるべき場所で活躍できるよう、スキルアップのサポートや成長機会の提供、働きやすい職場環境の整備を推進していくことが大事だと考えています。それが正にDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の取り組みになると思います。

当社には、さまざまなバックグラウンドと専門性を持つ従業員が在籍しておりますが、DE&Iの取り組みにおいて重要なことは、多様性を持った人財の共創を可能にするような環境を整え、企業価値を向上させることにあります。そうした取り組みにおいて、豊富なご経験を有する社外取締役からもご支援を頂いております。例えば、2022年から取り組んでいる女性管理職候補の育成を目的としたカシオペア経営塾に、池田社外取締役にもご参画いただきました。参加者にご自身の経験をお話しいただいたり、ビジネスプロジェクトのプレゼンテーションの講評をしていただき、参加者のモチベーションの向上や育成という観点で、大きな力になっていただきました。また、取締役会の実効性向上に向けた新たな取り組みにも参画いただきました。一例ではありますが、社外取締役の方々に当社の国内工場数か所を視察いただき、初めての試みとして工場で取締役会を開催したほか、生産現場の女性従業員を対象に座談会も実施しました。

はい、そういった取り組みには、積極的に参画させていただき、社外取締役としてもJ-オイルミルズへの理解が深まりました。春山CEOや山口CHROをはじめ新たな執行メンバーが、全国の各事業所を直接訪問する取り組みをさらに発展させ、マネジメントとしての方針を伝えるだけでなく、さまざまな意見交換をするインタラクティブな活動を継続して実施されておられます。一人ひとりを見ているよというメッセージを伝え、全員を一人の個人として認知し、敬意をもって接することが非常に大切です。ぜひ、これからも継続していただきたいと思います。

当社ではこれまでも歴代社長が従業員との対話活動を重要視してきました。私もその流れを引き継ぎ、従業員の皆さまと積極的に意見交換を行い、当社のVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を含めた価値観の共有を進め、一体感の醸成を図りたいと考えています。一方、当社の取締役会ですが、急激な原料価格の高騰や円安の進行という厳しい事業環境の中で、業績回復に向けた短期的な事業戦略が議論の中心となっていました。なかなか「人」を中心テーマに据えづらいという状況にありましたが、2024年度に業績の「復活」を果たしましたので、今後は改めて「人」すなわち人的資本を当社における重要なテーマと位置付け、私も取締役として議論の充実を図っていきたいと考えています。

人的資本に関する情報開示が、2023年3月期の決算から有価証券報告書において義務化されました。これは社会的要請であり、人的資本が企業にとって非常に重要である証しと理解しています。当社でもしっかりと議論をしていきたいと考えていますが、企業価値向上を目的とした取り組みが重要なのであり、開示が目的となっては意味がないと思いますので、そこは取締役会としても注意をして見ていきたいと考えています。

人的資本経営に係る現状の取り組みと課題

先ほど申し上げたとおり、2025年の最優先課題は人財の育成と自律性のある組織文化の醸成です。人財育成では、具体的な育成対象を明確化するため、中長期的に当社が目指すべき事業ポートフォリオを基に将来の人財ポートフォリオを作成し、現在の人財ポートフォリオとのギャップを把握する必要があります。その上で、次世代の経営人財や若手リーダーとなる人財、専門分野にフォーカスする人財、dXに精通した人財、新たな事業分野を開拓する人財など、経営戦略と連動した人財育成を効果的に進めなければなりません。特に、VUCAといわれる不透明な時代においては、これまでの延長線上だけで取り組むのではなく、新たな思考で事業を考え変革を仕掛ける必要があり、そのようなリーダー層の育成が急務と考えています。そうした人財が変革を促すことにより、自律性を有する組織文化の醸成につながると考えています。

私は、企業経営には大きく4つの要素があると考えています。①VMV(ビジョン・ミッション・バリュー):経営トップ・経営チームが従業員に対して、当社のビジョンを繰り返し語りかけ、従業員の共感を呼び、会社全体が一体化するためのコミュニケーションを図ること、②経営方針:中長期的な経営方針・戦略を策定すること、③事業戦略・戦術:経営方針・経営戦略に沿った、各事業の戦略と戦術を策定し実行すること、④経営基盤:それを実現するための企業経営基盤を強化することです。私の役割は経営トップとして①VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)や②経営戦略を策定することである一方、③事業戦略・戦術や④経営基盤は各担当CxOがオーナーです。経営基盤の柱の一つである人的資本戦略の推進についてはCHROにリードしていただいています。

私は当社の人的資本に関する施策は、積極的に進められていると思います。現実的に課題を抽出しても、具体的な打ち手に落とし込み、迅速に実行することは難しいものです。例えば、エンゲージメントサーベイによる従業員満足度も一時的ではなく継続的に改善していくことが重要です。そのためには、大前提として会社と従業員の良好な信頼関係構築が土台となります。会社が従業員の共感、理解を得て、自発的な貢献意欲を高めてもらうためには、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)の理解・浸透が大きな課題です。当社では、春山CEOが経営のミッションの一つとして「経営が従業員に対して、当社のビジョンを繰り返し語りかけ、従業員の共感を呼び、会社全体が一体化するためのコミュニケーションを図ること」とされており、取締役会でもテーマの一つとして議論していますので、今後の成果に期待しています。

従業員一人ひとりが、当社のVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を共通認識として理解・共感できるよう、丁寧に分かりやすく解像度を上げて説明することを経営として心掛けています。また、今年度の方針として、従業員とのコミュニケーションにおいて、常に前向きな変化と成功体験(いわゆるquick win)を実現しそれを蓄積していくことを強調しています。小さい変化であっても、前向きな動きを意識することで、当社の従業員に変革への実感と自信を深めてもらうことと、それにより人財の育成や組織文化の深化につながることを期待しています。

執行役員 CHRO 人事・法務統括部長 山口 好司

先ほどもお話にでていましたが、2025年7月より全事業所を対象に、経営チームによる訪問を開始しました。対話において寄せられた従業員からの意見や指摘に対してフィードバックを行い、積極的なコミュニケーションを図っていきます。また、従業員とのコミュニケーションの一環として、労働組合との間においても、従来実施してきた決算協議会などに加えて、初めての試みとして約50名から成る全国の執行委員と対話会を実施し、当社が目指す方向性を共有しました。全社員共通の取り組みとして、目指すべき未来「Joy for Life® -食で未来によろこびを®-」の実現に向け、対話を通して従業員一人ひとりが「壁を越え、共に挑み、期待を超える」と定義する私たちの価値/存在意義を胸に刻み、各自の行動の基盤としてもらいたいと思います。

今後に向けた取り組み

社外取締役(独立役員) 池田 安希子

今の時代、従業員が直接社会とつながりを持つことができるようになりました。以前のように会社とのつながりだけで、自然とエンゲージメントが高まる時代ではありません。当社従業員であっても社会の中の個人という存在なのです。このような中で、どうすれば従業員のエンゲージメントを高めることができるのかを考えると、それは会社のミッションと個人の夢を重ね合わせることしかないと思います。具体的には、従業員一人ひとりとコミュニケーションを図り、当社のビジョンや経営方針を伝えていく、育成についても各個人の想いを反映するなど、それぞれを尊重した取り組みを進めていくことが大事で、現在経営チームが取り組んでいこうとしていることを後押ししたいと思いますし、大いに期待しています。

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